風俗店で一回の射精と一回の恋をして気づく「人を好きになるのに理由なんていらない」――爪切男のタクシー×ハンター【第十四話】
仕事が一段落した私は、なんだか家に帰りたくない衝動にとらわれてしまい、風俗に行くことにした。ふと、目が合ったダルマが「外に出たい」と言っているような気がした。「お前も行くか」。私とダルマの冒険が始まった。
風俗に行く前に腹ごしらえをしようと思いラーメン屋に入る。入口には「刺青が入ってる方、暴力団の方の入店はお断りします」という紙が貼られていた。過去に色々あって刺青を背負いながらも前向きに生きている人よりも、現在進行形でダルマを持ち歩いている奴の方がヤバいはずなのだが、私は美味しくラーメンを食べた。ラーメンから立ち上がる湯気の向こうで目の無いダルマがこっちを見ていた。
行きつけの風俗店で受付を済ませ、指定されたホテルの部屋で女の子を待つ。ダルマも女の子を待っている。ホテルに現れた女の子は、女優の岸本加世子によく似た人懐っこい感じの可愛い女の子だった。すぐに机の上に置いてあるダルマに気付いた彼女は「可愛い~!」とダルマの頭を撫でた後に「お兄さんも可愛い~」と私の坊主頭をスリスリ撫でた。
私は恋に落ちた。
ダルマに優しくできる女はいい女だ。ダルマに優しくできる子は他人の辛さが分かる優しい子だ。普段はあまりエッチなサービスを受けずに、女の子との会話を楽しむことで心の隙間を埋める私も、そんな可愛らしい彼女にひどく欲情してしまった。一緒にお風呂に入り、ベッドの上で束の間の戯れが始まる。全裸になろうとした瞬間「ダルマさんは見ちゃダメ!」と言って、彼女はダルマの顔を壁の方に向けてから部屋の照明を暗くした。
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『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー! ![]() |
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