エンタメ

今や世界が熱狂する「ジャパニーズ・メタル」 長らく押し込められた暗黒の時代を振り返る

<文/山野車輪 連載第1回>

BABYMETAL、X JAPANが英米チャートインする時代


 2016年、BABYMETALのアルバム『METAL RESISTANCE』が、坂本九以来53年ぶりに米ビルボード総合アルバムチャートで39位に入り、今年、X JAPANのドキュメンタリー映画『WE ARE X』のサントラが、英国のトップ40ロックアルバムチャートで初登場1位を獲得した。

BABYMETAL『 METAL RESISTANCE』

BABYMETAL『 METAL RESISTANCE』

 これまで、海外で受け入れられている日本発のサブカルチャーといえば、アニメやマンガなどのオタク・カルチャーだった。だが近年は、ロック・ミュージックが話題となっている。

 海外で活躍している国産アーティストは、BABYMETALとX JAPANの他には、ヘヴィメタルバンドLOUDNESS、アニメソング歌手グループJAM Project、ヴィジュアル系ロックバンドDIR EN GREYなどがあげられる。これらは確かにロック・ミュージックであるが、もっと幅を狭めたジャンルでいえば、ラウド・ロック、さらに狭めると“ジャパニーズ・メタル”(略称“ジャパメタ”)というジャンルにまで狭めることができる。

 近年、少なくない数の海外のロック・リスナーが、ジャパメタに熱狂しているのである。

ヘヴィメタルへの蔑視や偏見


 これまでヘヴィメタルという音楽ジャンルは、一般の人々やメディアなどによって、さまざまな偏見・蔑視にさらされてきた。そして同時に、ヘヴィメタルのリスナー(“メタラー”)側も、自分の気に入らない音楽ジャンルへの偏見・蔑視意識を持っている。

 まずは一般人によるヘヴィメタルに対する偏見・蔑視の方から述べてみたい。ヘヴィメタルに対して一般人が持っているイメージは、「髪を逆立て、化粧を施した、頭悪そうな男が、騒音をかき鳴らしている」といったものだ。

 だが、このイメージは誤っている。海外のヘヴィメタル・アーティストには、メジャーデビュー時のX(X JAPAN)のように、極端に髪を逆立てたバンドはいない。かつてのLAメタルのバンドは、“ヘアメタル”と称されていたが、その彼らでも、モコッと髪を盛り上げていた程度に過ぎない。極端な髪逆立て現象は日本独自のスタイルなのである。

 また、彼らの頭の良し悪しについては、人それぞれだろう。聖飢魔IIは、早稲田大学で結成されたバンドだし、VOWWOWのヴォーカルの人見元基は、英語の教職に就いている。そして、「騒音」か否かと言えば、ヘヴィメタルは、ポップミュージックの中では比較的、演奏技術が重視される音楽ジャンルであるから、音量の大きさはともかく、品質は決して低いものではない。

80年代に固まったジャパメタのイメージ


 しかしこの誤ったイメージは、ある意味では自業自得だとも言える。というのも、一般人が80年代、悪魔風コスチュームをまとった聖飢魔IIや、髪を真上に逆立てたBUCK-TICKなどをTVで観て、そのようなイメージを持つに至ったと思われるからだ。

 TVバラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』では、ヘビメタ運動会や、食事をしている人がいる食堂内で暴れる姿などが放送されたこともあった。

 さらに、90年代になると、音楽ジャンルではなく見た目でのカテゴライズである“ヴィジュアル系(V系)”バンドが雨後のタケノコのように登場し、一時代を築いた。

ヘヴィメタルの世界の中の“メタル・カースト”


 ヘヴィメタルは外からの偏見・蔑視にさらされているが、内側にも、面倒臭い“メタル・カースト”(筆者命名)がある。“メタル・カースト”とは、その名のとおり上下関係を規定したものだ。

 メタラーを含む洋楽リスナーは、洋楽を上、邦楽を下と考える“洋高邦低”意識を持ち、邦楽は洋楽より劣るものとみなしている。中でもメタラーは、その傾向が強いように感じる。

 確かに、戦後しばらくの間、舶来品は高品質で、国産品は質が悪かった。そして音楽や映画、SF小説などのサブカルチャーも輸入されてきたのだから、“洋高邦低”意識が蔓延っても仕方がなかっただろう。

 ヘヴィメタルも、英国発祥の音楽なのだから、アジアの極東に位置する日本のヘヴィメタルが、本物ではなくまがい物とみなされても仕方がない。ジャパメタは、「日本産」ということで、下とみなされてきたのである。

次のページ 
まだまだあるメタルの世界への誤解

1
2




おすすめ記事