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「焼酎お湯割り」を劇的においしく飲む、ちょっとしたコツ

鹿児島ならではの焼酎の楽しみ方

 また、鹿児島には伝統的な酒器として、黒ジョカがあることもご存じだと思います。平べったい急須のような形をしていて、そのまま火にかけられます。ただ、キッチンのガス台に強火でかけると割れてしまいます。昔は火鉢において、ゆっくり温めていたものなので、扱いには注意が必要なのです。 黒ジョカ 黒ジョカの上手な使い方は、まず水と焼酎を半々に割って前の日から置いておくことです。これを「前割り」といいます。すると水分子とアルコール分子がゆっくり結合して、まろやかになるのです。  前割りの黒ジョカを火にかけて温めるのですが、どうやって飲むかというと、お猪口のような酒器で飲むのです。そう、まるで日本酒のように。私にはこれもカルチャーショックでした。グラスが出てくると思いきや、お猪口ですよ。お猪口でゆっくり、少しずつ飲むのです。  つまり25度の芋焼酎を水で割って、日本酒くらいの度数に落とすわけですね。それを温め、熱燗を飲むようにお猪口でいただく。本当に、気分は日本酒なんです。  今では日本酒の蔵もあるようですが、それは冷房・冷蔵技術が発達したからで、数年前まで鹿児島にはひとつも日本酒の蔵はありませんでした。黒ジョカ&お猪口は、暑い気候で日本酒ができなかった鹿児島が長年培った、知恵の結晶だと思います。  さて、本題のオンザロックに戻りますと、たしかに現代の芋焼酎は、きれいで飲みやすく、オンザロックにも向いていると思います。オンザロック専用の芋焼酎もあるくらいですし、そういう芋焼酎が出てきたからこそ、焼酎ブームが生まれたともいえます。  でも、地酒は地元の飲み方が一番ではないでしょうか。 さつま揚げとお湯割り 芋焼酎は、芋焼酎グラスを使ってお湯割りにして、キラキラ光ったキビナゴや、ものすごく甘い薩摩揚げ(地元ではつき揚げといいますが……)をつまみに飲むのが最高の贅沢だと思います。 江口まゆみ【江口まゆみ】 神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学卒業。酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本国内でも日本酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーの現場を100軒以上訪ねる。酒に関する著書多数。SSI認定利き酒師、JCBA認定ビアテイスター、JSA認定ワインエキスパート
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