ナツは夏。冬はじっと待つ
──お二人は、スランプに陥ったとき、どうやって対処しているんですか?
ナツ:僕、得意な時期が6~10月って決まってるんですよ。それ以外の時期は本当にヤバいです。去年の夏場は新馬戦と未勝利ばっかりやり続けて回収率200%ぐらいあったのが、11月の1週目に前月の勝ち分の半分ぐらい負けました。「あ、これおかしいな」と悟って、次の週からは賭ける金額を減らしましたよ。自分の調子が悪いってわかっているので、今の時期は熱くならず、負けてもいいと思ってやってます。当てに行こうと思うと悪循環に陥るので、今は一発大きいのが来るのを待っている時期ですね。どうせ夏になれば勝つから、追いかけるよりも待つ。今はそんな心意気でやってます。
──自分が勝てなくなっている理由は、どう分析しているんですか?
ナツ:冬場に勝てない理由は完全にわかってます。夏の馬体と冬の馬体が違いすぎてわからないんですよね。夏の理想的な馬体っていうのは頭に入ってるけど、冬の馬体はどういうのが良いかっていうのは理解不能すぎて……。冬は、どうしようもない冬毛ボーボーのデブな馬とかでも平気で上位に来ますよね。これも2月16日の話ですけど、京都牝馬ステークス(G3・京都競馬場芝1400メートル)で、10番人気のデアレガーロが1着になったのがいい例です。4か月の休み明けで、馬体重はプラス32kgなんて馬が来るなんて……。
TARO:肥えた休養明けはとくに来やすいですよね。今までに100回ぐらい言ってるけど、冬の馬体重プラスは普通のことで、気にする必要はない。冬毛なんて、好調な馬でも普通に生えてるし。強い馬は基本的に休んでる時期だし、なかなか絞れない時期でもあるので、冬の競馬は傾向にムラが多い。夏のほうが体調の良し悪しがレースの結果にそのまんま影響を及ぼしますよね。
──TAROさんはスランプとかないんですか? ナツさんみたいに、特定の時期に苦手意識を感じるようなことは?
TARO:いや、僕は基本的に、たとえ周囲から見たらスランプだとしても、いつも全部当たると思って買ってます(ドヤ顔)。でも競馬ってハズレることのほうが多いものですから、たまたま10回連続で当たらないこともありますしね。だから、どこまでが偶然によるハズレで、どこからが自分の予想のズレによるものなのか、っていうところは考えるようにしていますね。1、2週連続で当たらなくても、まぁまぁそういうこともあるかな?ってくらいの気持ちです。ただ、僕と違って本命党の人の場合は違いますよ。そもそも堅い馬券を買っているのに外し続けるっていう場合は、ちょっとズレてるかもしれないと思ったほうがいいですね。そういう意味では、自分を知るってことは大事ですよね。
──ナツさんはさっき金額を減らすと言っていましたけど、それ以外にスランプの時期の買い方ってどういうふうに変えてるんですか?
ナツ:3連単2頭軸ほぼ総流し、みたいな買い方を多用してますね。これって3連単でかなり大きいのを狙えるし、意外と点数を絞れる。15頭立てなら78点です。障害帰り・9歳馬・前走16着とかの100%来ない馬は消しますけど、逃げたら残るかもしれない単勝万馬券の馬はしっかり押さえてます。惜しいところでハズしたら腹立つんで(笑)。
TARO:僕の場合は一発でプラスに持っていく、みたいな極端な買い方を一貫して続けてます。こっちがきたら100、あっちがきたら0みたいな。ただ、最後の選択肢を間違えると、1か月負けが続くことも……まぁあります(苦笑)。
──予想のロジックを組み立てていって、最後の2択になったところで、ハズレの方を選んでしまうのって、典型的なスランプという感じがしますね。
TARO:その2択のところで正解を選べるかどうかが、予想家としてのある意味勝負勘であり、好不調を分けているんだと思います。そういう意味では、まるっきりハズレているときよりも、あと少しというところでのハズレが続いている状態こそがいちばんやばいですね。野球で言うと、鋭い当たりは出るんだけど、みんな野手の正面に行ってしまいあと一本が出ない。サッカーで言えば、支配率は高いんだけど点は入ってない、シュート本数はたくさん打ってるんだけど、ネットは揺らせない、みたいな…。そういうのっていちばん気持ち悪いじゃないですか。
ナツ:僕はそれが多いんですよ。だから総流しなんです。
TARO:総流しはアリですよね。ちょっと運の要素を取り入れることで、自分が見えていないものも獲れることがあるので。
──体調を崩してギャンブルから遠ざかった時期があって、この前1か月ぶりに競馬復帰戦をやったんですけど……全然ダメでした。やっぱり、継続して買い続けることが重要なんでしょうか。
ナツ:同じペースで買い続けてると、自分の勝ち方の傾向もわかってきますよね。あとは、毎週終わったレースを見返して、馬場傾向やレース展開をメモに残してます。
TARO:メモは大事っすよね。自分の過去の予想を見返すのも勉強になるし。何事も、自分を知るっていうことが大事ですよ。
ナツ:それでもダメなら、環境を変えるのもアリですね。僕はいつもネット投票なんですけど、競馬場なら出走前のウォーミングアップの返し馬も全頭見られますからね。返し馬でピンときた馬を買ったら当たった、なんてことありますからね。
【TARO】
競馬予想ブログとしては屈指の人気を誇る『
TAROの競馬』を主宰する気鋭の競馬予想家。最新の著書に『
万馬券の教科書』(ガイドワークス)、『
回収率を上げる競馬脳の作り方』『
回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』(扶桑社)が発売中。
【ナツ】
弱冠20代ながら競馬歴24年という生粋の競馬育ちで、一撃回収の美学が持ち味。『
予想家ナツの競馬予想ブログ』を主宰し、横浜で競馬ファンのためのバー『K-Sta』を経営している。Twitter:
@natukeiba YouTube:
競馬予想家ナツ
構成/野中ツトム、松嶋千春(清談社)
SPA!が運営する日刊SPA!内のギャンブル情報サイト「
勝SPA!(かちすぱ)」の取材班。Twitter(
@kspa_official)