更新日:2023年03月20日 11:02
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はっきり言う。安倍内閣は、おバカの見本市か?/倉山満

「令和」には三つの呪いが込められている。  一つ。そもそも、「令」とは皇太子と緊密な言葉なのだ。天皇の命令は特に、「詔」「勅」の字で表される。 「詔書」「勅語」などである。それに対し、皇太子の命令を「令旨」と呼ぶ。後世になると、「令旨」は皇太子以外も使用している。源平合戦の時の、有名な「以仁王の令旨」などだ。  院政期、政治の実権は上皇(法皇)が握り、「今の帝は東宮の如し」と揶揄された。東宮とは、皇太子のことである(後継予定者が天皇の弟ならば皇太弟)。  つまり、皇太子殿下は天皇に即位されても「東宮の如し」との意味が読み取れるのだ。  二つ。「令」の字は一回だけ候補に挙がったことがある。幕末の文久4(1864)年、朝廷からの案には「令徳」があった。前近代は漢字を漢文風に読む習慣があった。当時の常識では、「徳ニ令ス」としか読めない。どう読んでも、「徳川に命令する」の意味だ。誰が? 天皇をいただく朝廷しかない。朝廷の露骨な王政復古宣言だ。挑戦状ともとれる。  結局、「令徳」は採用されず、「元治」となった。ただ、「元」も「始」も「はじまり」を意味する。元治元年はその名の通り、池田屋事件~禁門の変~四国連合艦隊砲撃事件~長州征伐(馬関戦争)~功山寺決起と、幕末動乱から明治維新へと一気に突き進む起点の年となった。  このような歴史を持つ「令」の字は、動乱の歴史を背負っているのだ。だから、元号においては「忌み字」として採用すべきではないとするのが、常識的見解なのだ。  三つ。「令和」とは「和ニ令ス」の意味となる。「和国に命令する」のである。誰が?  天皇陛下と皇太子殿下ではない。  元号の事前公表そのものが、新儀である。日本国憲法下最初の改元である「平成」でも、新帝(今上陛下)の最初のお仕事は、改元への御名御璽であった。実際は臣下である政府が決めるにしても、改元大権の伝統的形式は守っていたからだ。  今回の事前公表で、それが破られた。内閣法制局長官横畠祐介は、 「天皇に配慮すれば、憲法違反になる」との理由で、事前公表に踏み切ったとか。  それどころではない、聞き捨てならない報道もされている。  安倍内閣は天皇と皇太子に事前に伝えれば憲法違反になるので、政府が決定するまで伝えなかったとの報道だ。政府が決定するや、西村康稔官房副長官が山本信一郎宮内庁長官に電話し、天皇陛下には長官が、皇太子殿下には西村泰彦次長から報告したと続く。  これが事実なら、安倍内閣は逆賊だ。逆賊で悪ければ朝敵だ。本来ならば陛下より治罰の綸旨を賜り、武力誅罰すべき所業だ。  さすがに安倍首相も、そこまで愚かではないと信じたい。4月1日の決定、発表の前に、首相は陛下と殿下にお会いしている。その時に候補となった6案を示し、そのいずれかになるかの勅許を得ているであろうと信じたい。
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「令和」は「政府の元号」
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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