更新日:2019年09月27日 15:17
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陛下よりも、首相の方にこそ、「退位」が必要ではないのか?/倉山満

日本の国体とは何か。皇室と国民の絆である

 陛下は我々国民に対し、「自分の身はどうなってもいいが、このままで良いのか皆で考えてほしい」と語りかけられた。一言も「辞めたい」とは仰られなかったが、日本国民の圧倒的多数は陛下を支持した。大多数の国民は何を仰っているかよくわからなかっただろうが、陛下の仰っていることだから間違いないだろうと信じた。  日本の国体とは何か。皇室と国民の絆である。皇室と国民の絆が切れない限り、日本が滅びることはない。  だが、これを快く思わぬ勢力がいた。内閣法制局である。  内閣法制局とは、憲法を頂点とする日本政府の法令解釈を独占する。御譲位に際し、「国民が同意しているので」との解釈を示した。これはいい。陛下も、国民の反対を押し切ってまで譲位をしたいとは仰っていないのだから。だが、ここからの法制局の逆襲がすさまじかった。やり玉に挙げられたのが、元号だ。  まず、元号は史上初の事前公表とされた。西暦645年の大化以来、改元は天皇の大権とされ、すべて時の天皇の名で行われた。近代は一世一元の制であり、元号はその代の天皇の贈り名となることが慣例となっている。平成改元においても、今上陛下の名において行われた。新帝、最初の仕事が改元なのである。  ところが日本政府は、「システム対応」というよくわからない理由で事前公表を押し切った。「システム対応に1か月もかかるはずがないだろう」と、日本中のシステムエンジニアから笑い者にされたのは記憶に新しい。現在の内閣見解は「あの時は、信じていた」だそうだ。  これは間抜けな話だが、この過程で聞き捨てならない発言も聞こえてきた。「天皇に配慮すると、国民主権を定める日本国憲法に違反する恐れがある」との声だ。  日本国のすべての政治家と官僚が逆らえない一言だ。総理大臣だろうが、財務事務次官だろうが、法制局から「憲法違反の疑義がある」と指摘されたら、疑義がないように政策を変更しなければならない。国会が可決した法律だろうが、財務省が認めた予算だろうが、関係ない。  かくして、5月1日にされる新帝から改元大権を取り上げ、今上陛下に「めくら判」を捺させたのだ。この過程で、安倍内閣は内閣法制局に皇室を貶める道具として使われた。  それでいいのか?  先週の本コラムで「令和」に込められた呪いについては触れた。また5月1日以降、皇后陛下は「上皇后」なる奇妙な名前で呼ばれる。新儀だ。  皇室は伝統を尊重する世界なので、よほどのことがない限り先例を尊重する。絶対に新儀をやってはいけない訳ではないが、不吉とされる。よほどのこととは、たとえば、大化の改新や承久(じょうきゅう)の乱、昭和の敗戦のような時だ。改革が求められた明治の御一新に際しても、「神武創業の精神」が先例とされた。新儀など、無理やり断行するものではないのだが、安倍内閣は次々と新儀をやらかしている。  何を考えているのか、何も考えていないのか、それとも何者かに操られているだけなのか。  ところで、菅義偉官房長官が「令和おじさん」として注目を浴びている。これまでは「黒子」「影の権力者」として知る人ぞ知る存在だったが、一般の知名度が飛躍的に上がった。一気に次の総理候補に躍り出た。
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このままいけば史上最長の内閣になるが、何一つ実績は無い
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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