いま、定年後に、引き上げられた年金受給まで耐えられずに破産する「定年破産」が増えている。背景にあるのは役職定年や定年再雇用による賃金の低下、さらに晩婚化で住宅ローンや高い教育費が60歳をすぎても重くのしかかる。70歳まで普通に働いても、人生100年時代を乗り切ることはできないのか。世間の“普通”が揺らぐ!

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「子供」の引きこもり問題が定年家計を破綻に導く
長引く子供の引きこもりが、定年破産の一因となるケースも少なくない。埼玉県在住の真鍋静子さん(仮名・66歳)は、次のように打ち明けた。
「今年38歳になる息子は14年前にウツで会社を辞めて以来、定職に就かず引きこもっています。子供の生活費や年金の支払いに加え、外出するきっかけになれば、と月6万円の小遣いも渡しています。今は夫の退職金を取り崩している状況ですが、貯金が底を突くのも時間の問題です」
先日、内閣府が発表した中高年の引きこもり数が61万3000人という数字。満40歳~満64歳を対象にした引きこもり調査であったが、現在の定年世代だけではなく、これからの世代にとっても、家庭に引きこもりがいる場合は破産に近づく可能性は非常に高い。どのような防衛策をすればいいのだろうか。引きこもり問題に詳しいファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏は次のように語る。
「定年前後は引きこもり問題を含めて老後の生活設計をするべき。“いつか働けるようになるのでは”と期待するのではなく、“もう一生働けないかもしれない”という最悪の事態を前提にして、家計を可視化することが最善です」
また畠中氏は引きこもりの子供が自活できなかった場合を想定して、親亡き後の生活を考えるべきだと提唱する。それが「サバイバルプラン」だ。
「これは親が持つ住宅や預貯金などを活用し、親亡き後も引きこもりの子供が平均寿命程度まで食べていくための生活設計です」
引きこもりの子供が一人で暮らしていくのに必要な額は、持ち家なら月10万円、借家なら月16万円が目安になるという。
「年金を月6万円受け取ると仮定して、子供が20年間ひとり暮らしするには、親は少なくとも1000万円は残したい。残せそうにないなら、就労支援などを利用して、月に数万円稼ぐことを模索するのが現実的です」
働きたくても働けない人はいる。むやみに自活を促すのではなく、現状を受け入れた生活設計を練るのが破綻を免れる策となる。
【畠中雅子氏】ファイナンシャルプランナー
’63年生まれ。引きこもりの子供を持つ家庭向けに生活設計アドバイスを行う「働けない子どものお金を考える会」を主宰。著書、メディア出演多数
― 定年破産する人の共通点 ―