更新日:2023年04月13日 01:52
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れいわ新選組は立民へのアンチテーゼ、N国は自民へのパロディーだ/倉山 満

健全な野党が絶えて久しいのに、日本人は我慢しかねている

 れいわの政策は大きく八つだそうだ。確かに、その中には荒削りの政策も多い。たとえば、「公務員増加」「国土強靭化」など、まともなブレーンがいたら絶対に載せさせないような政策も並んでいる。この種の政策は官僚支配を正当化し、お上にたかる業者にバラまく政策だからだ。だが、こうした欠点にも目をつぶれる要素がある。  山本代表自身の原点とも言うべき「反原発」を最後に回し、筆頭政策に「消費税廃止」を訴えている。さらに、他の野党との共闘にも、「せめて消費減税」と条件をつけている。今回の選挙が何の選挙か、わかっていたのだ。  立憲民主党の目玉候補は、軒並み落選した。その演説では、「夫婦別姓、同性婚」などと訴えていた。  その主張の、是非は置く(私は反対だが)。問題は、そんな放っておいてもついてくるような支持者向けの政策を訴えてどうするのか? 何の選挙か、わかっていないのだ。  安倍自民党(財務省と創価学会の傀儡)が推し進める消費増税への批判票が、れいわに流れたのだ。健全な野党が絶えて久しいのに、日本人は我慢しかねているのだ。  れいわ新選組が、立憲民主党へのアンチテーゼである理由だ。  れいわ新選組は、党首の人気で1議席は固いと思われていた。一方、N国は泡沫を通り越して、イロモノ政党だった。ところが、見事に議席獲得である。政見放送で、「NHKをぶっ壊す」「不倫、路上…(自主規制)」と連呼しての当選である。  かつて政見放送で放送禁止用語を連呼し、その発言をNHKに削除されて裁判で最高裁まで争った雑民党の東郷健という人物がいた。たとえるなら、立花氏の当選は東郷健が当選したようなものか。そう考えると、快挙である。  当選後の立花氏は、メディアジャックしている(NHK以外)。公約は「スクランブル放送の実施」すなわち受信料を払わない視聴者への放送を止めることである。N国は、この一点さえ同意すれば、他の政策のすり合わせは全く行わないと公言している。12人の無所属議員に共闘を呼びかけ、本稿執筆時点で2人が応じた。  1人の国会議員ができるのは、質問主意書を発するだけである。質疑も行えないし、希望する委員会にも所属できない。  これを「手段を選ばぬ多数派工作」と批判する者がいる。では、その者は自民党の多数派工作をも、何倍も批判してきたのであろうか。そして、安倍内閣は現在進行形で手段を選ばぬ多数派工作をしている。

N国が気に入らないなら、堂々と公開討論で叩き潰せばよい

 安倍自公連立政権は維新を足しても改憲発議に必要な3分の2に、4議席足りない。そこでN国にも食指を伸ばしたが、立花代表は「スクランブル放送に同意してくれるなら改憲に賛成する」と応じた。当然だろう。 「ワンイシュー政党」と小馬鹿にする向きもあるが、政党が最も大事な一つの政策にこだわるのは当然だ。かつて自民党は「日米安保体制と資本主義経済に賛成さえすれば自由」と言われたが、今やその二つとも共通の政策ではない。  N国が自民党のパロディーである所以である。ただし、立花代表は意図的に演じている。本物のバカは、バカを演じることはできない。  さて、当のNHKは立花氏を完全無視しようとしている。「5人の議員がいない政党は、討論に出さない」と、よくわからない内規を盾にして。その一方、「不当な発言には屈しない」と幹部自ら発信するのみならず、与党の政治家にも同様の発言をさせている。  それほどN国が気に入らないなら、堂々と公開討論で叩き潰せばよいではないか。  老害とは何か? 堂々と表の討論で決着を付けず、自分は安全地帯で裏工作をする輩のことである。  老害駆逐が求められている。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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