千葉「台風被害」を拡大させた本当の原因。なぜ県と国の初動が遅れたのか
「過去最強」と言われた台風15号が関東を直撃してから約2週間、今なおその被害が拡大し続けている。9月19日時点の停電件数は3万戸あまり。断水は5000戸を超えている。長引く停電の影響で熱中症などによる死者は3人に上り、台風通過直後は「10人以上」と伝えられた負傷者は100人超。千葉県は一部損壊などの被害件数を約1万戸と発表しているが、その数値も不確かと言わざるを得ない。いまだに調査の行き届かない自治体が存在するため、被害はさらに拡大すると見られているのだ。
背景にあるのは、長引く停電と不安定な天候だ。台風通過直後には猛暑が襲い、15日からは断続的に大雨に見舞われた。18日も、フロントガラスに打ちつける雨音がカーナビの案内音声をかき消すほどの大雨が千葉県を襲っていた。
「16日に停電から復旧したと思ったら、この大雨でしょ。屋根が吹き飛んで泥だらけになった家財道具をようやく捨てきって、さあ家を綺麗にしようと思ってもまた水浸しになっちゃう。これじゃあ、いつまでたっても前の暮らしに戻れない……」
こう話すのは特に被害が甚大だった鋸南町(きょなんまち)に暮らす70代の男性だ。一変した生活は被災者たちの体にも影響を及ぼしているという。
「台風が去ってからは猛暑が続いたこともあって、布団に入っても1、2時間で寝苦しくなって起きて、車に乗ってクーラーに当たって、また寝るの繰り返し。ここらへんは漁師町だから頑丈なジジイが多いんだけど、重い家財道具を何度も捨てに行ったり、屋根に登ってブルーシートを自分で張ったりしたら、さすがにガタもくる。屋根から落ちてケガする人もいれば、一気に下がった気温のせいで体を壊した人も多い」
すでに報じられているとおり、県内では屋根の補修工事を行う職人が圧倒的に不足している。千葉市の熊谷俊人市長がツイッター上で「被災屋根のブルーシート養生をしていただけるボランティアの方を募集します」と訴えた際には、「素人にやらせるのは危険すぎる」と批判が殺到して、市長がツイートを削除する一幕もあった。
窮余の策として被災者らは自ら屋根の補修を行っているが、いまだに雨漏りさえ凌げていない家庭が多数あるのだ。南房総市在住の70代女性が話す。
「私の家は駆けつけてくれた息子がブルーシートを張ってくれたんですけど、素人の仕事だから土嚢とシートがズレて、また雨漏りがひどくなってきた。職人さんに昨日、張り直してもらったんだけど、屋根の補修はまったく目途が立ちません。町内では、おそらく瓦を張り直すのに1年はかかるだろうと言われています」
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