今も全国各地に多数ある“開かずの踏切”。2016年には踏切事故や渋滞解消のための立体交差化や構造の改良、設備の整備などを柱とする改正踏切道改良促進法を施行。さらに国土交通省は同年に全国58か所、翌2017年には529か所を開かずの踏切として発表。鉄道会社や自治体に対して改善を義務付けた。
花月園踏切(横浜市鶴見区/京急・花月園前駅そば)。日中でも10分以上待たされることはザラ
開かずの踏切が多い都道府県
ちなみにこのデータによると、開かずの踏切がもっとも多いのは東京都の85か所、次いで愛知県の69所、神奈川県の55か所と大都市圏に集中していることがわかる。
1位 東京都/85か所
2位 愛知県/69か所
3位 神奈川県/55か所
4位 兵庫県/52か所
5位 埼玉県/45か所
※国土交通省『踏切道改良促進法に基づく法指定箇所一覧』より
そこで今回、東京近郊にある開かずの踏切のうち、特に有名な5か所を訪問。実際にどの程度待たされるのか、その開かずっぷりを体験してみた。
まず最初に訪れたのは、首都圏最強との呼び声が高い「花月園踏切」(横浜市鶴見区/京急・花月園前駅そば)。
渡るのに時間がかかりそうな花月園踏切
ここは二輪車と歩行者の専用踏切。東海道本線に京浜東北線、横須賀線、湘南新宿ラインと多数の路線が走っているほか、貨物列車も頻繁に通る。しかも、並行して京浜急行の「京急鶴見第4踏切」もあり、これも合わせると線路は全部で12本。2つの踏切を合わせた距離は約72メートル(※筆者計測)にも及ぶ。
花月園前駅の陸橋が迂回路になっている
一般的な歩行速度1秒1メートルで計算しても1分12秒かかるので高齢者や幼い子供には厳しい。すぐ隣にある花月園前駅の陸橋が迂回路になっており、距離的なロスも少ないことからこちらを利用する人が多いようだ。
日中なのに10分以上足止めを食らっていた
筆者が訪れたのは比較的本数の少ない日中の時間帯だったが、10分以上閉まったまま。宅配ビザのバイクがずっと足止めを食らっていた。届ける側にとってはイライラが募るまさに“魔の踏切”だろう。
一方、いろいろな種類の列車が一度に見ることができる場所でもあり、踏切周辺にはカメラを構えた撮り鉄の若者たちが何人もいた。その点では撮り鉄の聖地との見方もできる。
朝晩には最大270メートルの踏切渋滞が発生!
次に向かったのは、京王本線の「代田橋6号踏切」(東京都世田谷区/代田橋駅~明大前駅)。同路線は笹塚駅~仙川駅間(7.2キロ)に25か所の開かずの踏切があり、なかでもここは自動車交通量の多い井ノ頭通りにあるため、朝晩は長い踏切待ちの渋滞が発生することでも有名だ。
昼間もプチ渋滞が起きていた代田橋6号踏切
昼間でも運行本数が非常に多く、遮断機が下りている時間のほうが長かった。これでは渋滞ができるのも仕方ない。
なお、この問題に対して東京都と京王電鉄は、高架線にして25か所すべての踏切をなくすことをすでに発表。完成は2022年度の予定で、渋滞解消はもはや時間の問題だ。
梶原踏切に隣接する尾久車両センター
続いて訪れたのは、宇都宮線や高崎線などが停車する尾久駅から歩いて6分ほどの場所にある「梶原踏切」(東京都北区/上野駅~赤羽駅)。実は、ここには尾久車両センターという大規模な車両基地があり、回送列車も多く通過する踏切だ。
現地に着いたのは、夕方のラッシュには少し早い時間帯だったこともあり、踏切はよく鳴るが、開かずというほどではなかった。梶原踏切をよく利用するという地元の主婦によると、「
朝と夕方はなかなか開かないけど、日中はそこまでひどくない」とのことだ。
すぐ隣に跨線橋がある梶原踏切
それに開かずの踏切対策として、隣に立派な跨線橋もあり、上からは車両基地が一望できる。確かに、眺めはいいのだがエレベーターでしか昇り降りできず、階段はあるものの非常用で普段は開放されていない。1分1秒が惜しい朝の通勤・通学客のことを考えれば、階段も開放したほうが便利のように思えるが……。