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安全なのはどっちか? 12年前のベンツとイマドキの軽自動車

国内専用車、特に軽自動車の安全性には疑問が残る

 JNCAPのテスト内容を参考とする場合、軽自動車は「前面衝突」が起こった場合には確かに安全だが、それ以外の安全性には疑問が残るということになるでしょう。  特に、側面衝突についての安全性は疑問視されており、「軽微な事故で横転する軽ハイトワゴンの危険性」という論文も出ています(参考:日本交通科学学会誌)。  この論文によれば、軽ハイトワゴン(車高が高い軽自動車)は横転しやすいことが指摘されていますが、意外なことに「ゆっくり走っているクルマ同士」でぶつかっても横転しやすい結果が出ているのです。  試験によれば、走行しているクルマが時速40km、衝突したクルマが時速20kmでも、40kmで走るクルマが横転するとのこと。また、単独走行でもハンドル操作によって横転しやすいという指摘もありました。  そして、これまで生産された多くの軽自動車にはカーテンエアバッグが装備されていないため、横転時に頭部を損傷するリスクがあるとのこと。横転時に頭部を保護するためにはエアバッグが5秒膨らんでいる状態が望ましいようですが、「通常のエアバッグはエアによる圧力の保持時間は0.05秒程度」とのことです。  これは私の指摘になりますが、軽ハイトワゴンは室内空間の広さを売りとしているため、側面がフラットになっていると感じます。そうすると、横転した際、クルマがバタッと倒れ、頭が地面に打ち付けられる危険性が高いと思います。  また、JNCAPのテストでは、横転してもスコアには大きな影響とならず、衝突安全性能が星5と評価される事例もあるようです。  実際、You TubeにあるJNCAPの衝突試験動画を見ると、軽ハイトワゴンの側面衝突試験では、横転する車両がかなり目に付きました。ちなみに、カーテンエアバッグ装着車両でも、衝突された側のエアバッグは膨らみますが、反対側のエアバッグは膨らんでいません。横転すると衝撃を受けるのは、その反対側のほうなのです。

軽自動車の後面衝突の安全性は大丈夫なのか?

 現在、JNCAPでも、背後から衝突された場合を想定した試験が行われていますが、その対象となるのは、主にシートの性能だといえます。また、この試験では運転席と助手席だけが行われており、後席は対象外です。
ベンツAクラス

ベンツAクラスは、後面から追突された想定での試験を実施。ボディと頭部まではかなりなスペースがある(YouTube「Mercedes Benz A Class vs Opel Astra Crash Test」より)

 最新型の軽自動車に乗ればわかりますが、前席のヘッドレストと後席のではずいぶん形状が違うのです。  また、ある軽ハイトワゴンの前席は日常の快適性に支障をきたすほど、前に角度がつけられていますが、これはテスト結果を良くするためなのではという疑念があります。後席のヘッドレストには前席のような違和感がないため、その疑念はさらに深まります。  実際、後席のヘッドレストの安全性は高くないと感じる場面もあります。ある最新型軽自動車の試験では、衝突時に後席のダミー人形の頭部がリアガラスを割っていました。ちなみに、その軽自動車は安全性能が高いといわれている車種です。  さらに、軽ハイトワゴンは室内空有を広く見せるためか、後席標準シート位置が車体後部にかなり近い状態。ヘッドレストを規定の位置にするとリアガラスと接触するぐらいの位置になります。これでは、後方から衝突された場合に頭部を直撃しそうだと思われますが、そういったテスト結果はどこを探しても見つからないのです。
現行型ホンダNワゴン

現行型ホンダNワゴン。後席シートのスライド位置を後方にした状態で、ヘッドレストを頭の位置に伸ばすと背面からほとんど距離がない状態になる

 以上のことから、私は軽自動車の安全性能には疑問を感じています。特に日本交通科学学会誌の「軽微な事故で横転する軽ハイトワゴンの危険性」の論文を読むと、現在のテストスコアと、実地での安全性能には乖離があるのではないかとすら考えてしまいます。  JNCAPは、至急テスト項目を増やし、より厳しい試験内容にすべきだと思うのですが、それを望むのは私が単に心配性なだけでしょうか?
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

もう新品は買うな!もう新品は買うな!

もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう

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