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菅首相が「選挙に勝てない総裁」と判断されたらどうなるか?/倉山満

「選挙に勝てない総裁」と、もし菅首相が判断されたら、「菅おろし」の動きも見えてくる

 さて我が日本はどうか。菅首相がコロナ対策を「断固たる信念で風任せ」である以上、不況対策には移れない。しかし、政治日程は容赦なく押し寄せてくるし、重要な選挙が目白押しだ。  まず4月には、補欠選挙がある。逮捕された河井元法相夫妻の後釜を狙い、与党の自民党と公明党が割れている。連立の行方にも関わりかねない亀裂だ。  7月初旬には、東京都議会議員選挙がある。公明党と創価学会が最も重視する選挙だ。6月末にずれ込むかもしれないが、いずれにしても都議会議員選挙の前後3か月、つまり半年は解散総選挙が打てない。仮に菅首相が解散を断行しても、創価学会の十分な支援が得られないので、与党が苦戦するので、事実上はこの半年は解散権が封印されているのと同じだ。  7月にはオリンピックをやるらしい。どんな形になるかは不明だが、内外のしがらみでやめる訳にはいかないとか。パラリンピックの終了が8月の予定で、その頃には秋の政局に向けての動きが活発になっているはずだ。  9月は、自民党総裁の任期切れだ。今の菅首相(自民党総裁でもある)は、安倍前総裁の任期を引き継いでいるだけだ。その時に支持率がどうなっているか? もし「選挙に勝てない総裁」と判断されたら、菅おろしの動きも見えてくる。その時の自民党は、10月の衆議院任期切れまでに新総理総裁に代え、その御祝儀相場で選挙をやって政権を維持する、と考える。日本の政治家の絶対の原則は「自分は落選したくない」だ。安倍前首相が長期政権を築けたのは、すべての国政選挙に勝ったからだ。つまり自分を当選させてくれる総理総裁だから、引きずり降ろすはずがない。そして安倍政権では、緩やかながらも景気回復をしていた。菅内閣で、景気回復の望みは薄い。

「枝野理想シナリオ」に致命的な穴

 ここで夢を見ている人物がいる。枝野幸男、立憲民主党代表だ。自民党は「どんな失政をやらかしても、いつもの民主党が守ってくれる」と思っているだろうが、景気が悪い時は別だ。リーマンショックの時は、国民が自民党を与党から叩き落とした。枝野氏は、その再現を狙っている。自民党が国民に呆れられた時、野党第一党党首の地位にいれば政権が転がり込んでくると本気で考えている。その為に野党内政局を勝ち抜き、衆議院の候補者を頭数だけでも揃えてきたのだ。  だが安心できる要素がある。「枝野理想シナリオ」には致命的な穴がある。仮に衆議院選挙を勝利しても、参議院の圧倒的第一党は自民党なのだ。ねじれ国会になる。だから、2022年に行われる参議院選挙の勝者こそが日本政治を制するのだ。  なお、’22年11月にはアメリカ議会の中間選挙がある。これを勝てば、バイデン政権は真の本格始動だ。バイデンの公約はそのまま実行すれば破滅するような内容だ。共和党が勝てばレームダックに追いやれる。つまり、2年後にバイデンは、「破滅」か「公約破り」か「レームダック」なのだ。ならば、日本が力を回復していれば、大チャンスだ。  他人事のように眺めるのではなく、どうするべきかを考えよう。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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