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「帰国できない」在留外国人たちの極貧生活。職もなく放り出される悲惨

今や283万人の在留外国人が暮らす日本。コロナ禍で多くの人々が困窮するなか、外国人が置かれた環境は、さらに過酷なものだった。仕事もできず、帰国もできない…そんな彼らの極貧生活に迫る。今回取材したファンさん(仮名・29歳)は、’18年にベトナムから来日。いじめや暴力の横行する実習先から逃げ出し、いくつかの仕事を転々とするも、借金がかさみ困っていると話す。

劣悪な実習先から逃亡。借金はかさみ……

在留外国人の極貧生活

発展が続くベトナムでは物価が高騰中だという。「本当なら仕送りの金額も増やす必要があるのですが、今は自分の生活すらままなりません」

「来日時には100万円弱だった借金が、250万円に膨らみました。今は就労も禁止されているので、正直八方ふさがりです……」  そう伏し目がちに語るのは、’18年に技能実習生としてベトナムから来日したファンさん(仮名・29歳)。昨年9月に不法滞在者として逮捕され、現在は支援団体に保護されている身だ。 「建築を学ぶのもそうですが、家族のためにお金を稼ぎたいので技能実習生に応募した。寮も入れるし、月15万円は稼げると聞いたので。ベトナムの平均月収は2万~3万円。それに比べれば破格です」  送り出し機関に支払うための管理料75万円や諸々の渡航費は銀行から借りた。生活を切り詰めれば1年半で返せる計算だった。 「ところが、実習先に行くと、働けるのは週3~4日のみ。収入は月10万円弱でした。寮の部屋も狭く、そこに大の男4人での寿司詰め状態というありさまです」

横行する暴力といじめ

 話が違うと思い落胆したファンさんだったが、一番衝撃だったのは暴力といじめの横行だった。 「作業や返事が遅いと社長から鉄の棒で叩かれるんです。特にある日本人の先輩は、ヘルメットに“下僕”と貼られるなど酷い扱いを受けていました。僕も社長に促されて彼の髪を男性器の模様にそるといういじめに加担させられました」  いじめの矛先が自分に向く不安を感じたファンさんは、こうした現場の写真や動画を撮影した。 「この悲惨な状況を監理団体(技能実習生や受け入れ企業をサポートする日本国内の非営利団体)や同じ実習生に知ってほしかった。しかし、それを担当者に見せ、実習先を替えたいと訴えても動いてもらえせんでした。働き始めて3週間で、同じ実習先にいた友人が帰国しました。相当怖かったのでしょう。本当は僕も逃げ出したかったですが、今帰っても借金を返せないと思い踏みとどまりました」
在留外国人の極貧生活

ファンさんが社内でのいじめを訴えるために撮影した動画の一部。日本人の先輩が社長に首輪を付けられ、犬歩きを強制されている

 ファンさんが社内でのいじめを訴えるために撮影した動画の一部には、日本人の先輩が社長に首輪を付けられ、犬歩きを強制されている姿が映っている。その後、ベトナム人コミュニティ内においてこの動画が「実習生への虐待」という間違った形で拡散。日本国内でも物議を醸したが、これが実習生でないとわかると話題は収束してしまったという。
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友人宅に1週間ほど滞在したところ“失踪”扱いに
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