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ネットの画面越しでは難しい、感情やイメージを伝えること/鴻上尚史

映像でのコミュニケーションは、気持ちを言語化したほうがいい

 大人は、ムチャクチャ語を聞いても、何がしたいのか理解できません。  でも、子供は「なんか、一緒に食べにいこうっていっているみたい」 「ラーメン?」とムチャクチャ語でも伝わることがよくあります。  それは、子供の話し言葉が「情報」だけではなく、「感情やイメージ」に満ちているからです。  大人になると、話し言葉はただ言語化した情報を伝えるだけのものになっていきます。 「明日、集合は2時です」とか「レポートは今週金曜までに出してください」とかです。  話し言葉が持つ感情やイメージ(つまりはニュアンスということです)がやせ細って、じつに貧しい表現になっていくのです。  でね、Zoomとか映像で話す時は、情報だけが伝わって、感情やイメージはとても伝わりにくいのです。  アメリカの調査会社が2000人にインタビューした所、在宅勤務になって、53%の人が会社との繋がりを感じなくなったと答えました。  言葉がなくても、上司が感謝しているとか満足しているという「感情やイメージ」は対面していると伝わります。  でも、画面ではなかなか伝わりにくいのです。  なので、画面越しの会話の時は、「感情やイメージ」をちゃんと言葉の「情報」として語る必要が出てくのです。  簡単に言えば、「ありがとう」「感謝している」「助かった」と普段ならあまり言わない人も、ちゃんと言語化した方がいいということです。  そう言えば、ツイッターで、とうとう、Zoomの画面のどっちが上座・下座で、上司はどこに表示してという解説を見ました。  作った人は、ビジネスだからやっているのでしょうが、嘘も百回言えば真実になると言ったナチスのゲッペルのように、やがて、これが本当だとマウントを取り始める人が生まれるのでしょう。  お葬式のマスクは黒が常識だ、という文章も見つけましたね。  こういう嘘のマナーをでっちあげる人の害悪は本当に深いと思います。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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