仕事

コロナ解雇は「正社員だから他人事」ではない。実は非正規より多い実情

リストラを宣告された「部下なし管理職」の男性

生き残る会社員

律儀にスーツで取材場所に現れた馬場さん。「そもそも管理職としての実体がないんだから、成績なんて残せるわけがなかった」

 昨年末にオフィス用品メーカーからリストラを宣告された馬場秋紀さん(仮名・47歳)も部下なし管理職だった。 「30代で子会社へ出向を経験し、『戻ってくるときには管理職待遇だから』と上司から言われていたんです。5年後、元の会社へ戻った際に与えられた役職が『副課長』。その名のとおり課のナンバー2ですが、今まで存在しなかった急造のポストで実態はヒラ社員と変わりません。『給料は多少上がったからいいか』と深くは考えてなかったんですが……」  コロナによりオフィス用品の需要は激減。昨年12月に部長と面談し、退職勧奨を受けた。 「合意せず居座ってやろうかとも考えたんですが、『勤務成績不良の管理職の解雇は就業規則で正当に行える。自分で決断したほうが今後のため』と脅迫めいた言葉をかけられまして。泣く泣く勧奨を受けました」  3月での退職が決まったものの、2月になっても次の会社は見つからず。今は部下なし管理職という境遇に甘んじていた自分を責める日々だという。

企業の組織改革はコロナ前から進んでいた

 リストラに続いて「生き残れない理由」として5位に挙がったのが「早期退職者募集」。東京商工リサーチによると、’20年に早期退職者を募った上場企業は93社と前年の2.6倍に増えている。 「確かにコロナ禍で早期退職者を募る企業は増えていますが、’19年から増えていたんです。私の肌感覚的にも、コロナ以前から『組織改革に踏み切りたい、変化に対応できない中高年者を整理したい』と考えていた企業は多く、そこにコロナという大きな契機が合わさったことで、人員整理に舵を切った企業が加速度的に増えていると考えられます」(FeelWorks代表・前川孝雄氏)
生き残る会社員

’20年は93社が早期退職者を募り、1万8635人が退職。しかしコロナ以前の’19年から増加傾向が見て取れる

 コロナによる打撃は無視できないものの、それ以上に、多くの企業が人員整理による組織改革を推し進めたがっていた本音が見え隠れしているようだ。
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正社員を業務委託へと変更する企業も
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