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いつまでもアメリカに頼っていられない。自主防衛、自主独立だ/倉山満

中東とウクライナは間違いなくリンクしている

 今月に入り、イランがサウジアラビアに戦争を仕掛けるのではないかとの動きが察知された。むしろ、察知させるかのように動いたとすら疑いたくなる。イランは中露陣営、というより反米国家。サウジはアメリカ陣営に属す。同じイスラム教徒でも宗派も民族も違い、仲が悪い。サウジはアラブ民族でスンニ派、イランはペルシャ民族でシーア派。石油が出る中東で、地域大国の両者が紛争を起こすと、アメリカはウクライナどころではない。  アメリカはウクライナに政府高官を送り、アメリカの「ウクライナ疲れ」を伝達、ロシアとの和議の用意をするよう伝えた。そしてウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、「停戦交渉に応じる条件」を声明する。もちろん、「奪った土地を全部返せ」式の、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が呑むとは思えない条件が羅列されているが、アメリカに一定の配慮を示した格好だ。ウクライナもスポンサーのアメリカの意向抜きには戦えない。  中東とウクライナ。間違いなくリンクしている。イランを唆したのが誰なのか。はたまた状況を読んだイランが独自の判断で動いたのか。  絶対確実な情報など簡単に手に入るはずがないが、少なくともアメリカは中東での作用によって、ウクライナで動いた。まったく関係が無いどころか、関係している。国際政治とは地球上を舞台にしたゲーム(駆け引き)なのだから。

いつまでもアメリカに頼っていられない。自主防衛、自主独立だ

 ただし、関係が無いものまで結び付けてはならない。一部には「明日、中国が台湾に侵攻する。そうなると世界大戦だ」と煽るマスコミもある。だが、そんな気配が中国にはない。なぜなら、国力が昇り調子の中国にとって、今の国際秩序は都合が良い。いわば「現状維持勢力」であり、リスクをとって「現状打破勢力」に回る必要が無い。もちろん、ハプニングによる戦争はいついかなる時もありえるので警戒は必要だが、より怖ろしいシナリオに備えるべきだ。  このまま行くと、中国は20年でアメリカを経済力で上回る。その時、台湾は戦わずして落ちる。  我が国も、いつまでもアメリカに頼っていられない。敗戦後の日本人は「いつかアメリカさんにお帰りいただく」と胸に秘めていた。自主防衛、自主独立だ。  今やアメリカの方から「自分の身は自分で守ってくれ」と言ってきている。  では、遠慮なく。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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