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ニュースで報じない「ハマスの最終目的」とは?日本のメディアが“中立であるフリもしない”理由

迎撃しなければ多数のイスラエル国民が犠牲になる

中東問題再考

※画像はイメージです(以下同)

 この戦争をガザの境界線で取材したTBS中東支局長の須賀川拓は、現場から次のように伝えました。 「ちょっと悲しいのはこの、ガザのハマスだったりイスラミック・ジハードだったりっていうのは、迎撃されるのがわかっていながらこれだけロケットを放ってきて、でこうやって、ほとんどああやって迎撃されるのをわかっていて、で、実際撃って、それに対してものすごい報復を受けるっていうのも絶対わかってるはずなんですけど、で、報復を受けるってことはやっぱりそれだけパレスチナの人々が亡くなってしまう、ってこともわかっていて、それでもなお撃ってくる、撃つしかないのかもしれないし、それ以外にこう、自分たちの考えを伝える方法がないと思ってるのかもしれないですけど、それも極めて悲しい現実ですよね」  驚くべきは、須賀川にとって「悲しい」のは、ハマスのロケット弾がイスラエルによって迎撃されることだ、という点です。  イスラエルが迎撃しなければハマスのロケット弾は多数のイスラエル国民を殺傷することになります。  彼は次のようなツイートもしています。 「私がパレスチナ寄りであることは否定しません。そして、過去に多くの国民を失ったイスラエルが徹底的に危険を排除するのも当然です。戦争に明確な善悪なんてありません。ただ、圧倒的火力で叩き潰すのは…アイアンドームでほぼ全てロケット弾を迎撃し、F15で空爆」  須賀川は中立であるフリすらしません。しかも「ロケット弾」という語でパレスチナを表現しているように、彼はロケット弾を撃ち、無差別テロ攻撃をするハマスを無意識にパレスチナと同一視しています。  彼は「戦争に善悪なんてない」とわかったようなことを言いながら、完全に防衛目的の防空システムであるアイアンドームがハマスのロケット弾を迎撃することまでも「圧倒的火力で叩き潰す」と奇妙に悪魔化し、イスラエルの「加害者」の側面を強調して、自分はパレスチナに寄り添うと平然と認めているのですから、明らかにイスラエルは悪という立場をとっています。  彼の発言は自己矛盾しています。

パレスチナ人はハマスの被害者である

中東問題再考 NHKや高橋和夫、須賀川は、イスラム過激派組織ハマスをパレスチナと同一視し、そちらに肩入れすることが正義であり、イスラエルは悪だと信じている、あるいはそう印象操作することが正義だと信じているようです。  おそらく彼らは、イスラエルとハマスの戦争が非対称戦であり、ハマスが弱いことや、パレスチナはかわいそうだということを全力で強調すれば、判官贔屓で「かわいそう」という言葉に弱く人情に篤い日本人は、必ずパレスチナに同情してイスラエルを憎むようになるだろうと踏んでいるのでしょう。  しかし、彼らは事実認識の点において間違いを犯し、勘違いをしている、あるいは事実を知っていて隠蔽しています。  その事実とは、第一にハマスは「安い武器でイスラエルに立ち向かい、かわいそうなパレスチナ人を守る正義の味方」などではなく、「パレスチナ人を抑圧し、利用して戦争犯罪を犯しているテロ組織で、パレスチナ人はハマスの被害者だ」ということです。  第二にイスラエルは国際的に認められた国家であり、自衛権を有している、ということです。
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ハマスの「最終目的」とは
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1976(昭和51)年東京生まれ。イスラム思想研究者。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。『ニューズウィーク日本版』、産経新聞などで連載中。著書に『中東問題再考』『イスラム教再考』(以上扶桑社新書)、『エジプトの空の下』(晶文社)など。

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