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ニュースで報じない「ハマスの最終目的」とは?日本のメディアが“中立であるフリもしない”理由

イスラム過激派テロ組織ハマスの目的はイスラエル殲滅

中東問題再考 日本のメディアはハマスを称賛し、その本質を隠蔽することに懸命です。  朝日新聞と毎日新聞はハマスのことを「イスラム組織」、読売新聞は「イスラム主義組織」、NHKと日経新聞と産経新聞は「イスラム原理主義組織」と説明しています。  ハマスが日常的にテロを実行し、西側諸国でテロ組織指定されている「イスラム過激派テロ組織」であると明言するメディアはありません。  既述のようにハマスという名称は、アラビア語の「イスラム抵抗運動」の頭文字をとったものですが、1988年に発表されたハマス憲章はこのイスラム抵抗運動について、イスラム教に基づくプログラムであり、パレスチナの運動であると同時に普遍的運動であると述べ、「どれだけ時間がかかろうと神の約束の実現をめざす」と宣言しています。 「神の約束」については、「最後の審判の日は、イスラム教徒がユダヤ人と戦い、ユダヤ人が石や木の後ろに隠れるようになるまで来ない」という預言者ムハンマドの言葉が引用されています。  ハマス憲章の冒頭には、ムスリム同胞団設立者ハサン・バンナーの「イスラエルは、以前に他の国を消滅させたように、イスラム教がそれを消滅させるまで存在し続けるだろう」という言葉が引用されています。  こうした文書から、ハマスの目的がイスラエル殲滅であることは明らかです。

米国や英国、カナダはハマスをテロ組織に指定

中東問題再考

※画像はイメージです

 これは、同じくイスラエル殲滅を国の目標に掲げるイランが、ハマスを支持・支援する所以でもあります。  米国のNGOサイモン・ウィーゼンタール・センターが2021年末に発表した「2021年世界で最も反ユダヤ主義的な主体トップ10」の第1位はイラン、第2位はハマスです。  イランの他にカタールとトルコもハマスに資金援助を行っており、中国もハマスの代表を北京に招くなどハマス寄りの姿勢をとっています。  ハマス憲章第11条には、「パレスチナの地は、最後の審判の日までイスラム教徒の将来の世代のために聖別されたイスラムのワクフ」と明記されています。 「ワクフ」というのは、イスラム法で所有権の移転が禁じられた財産の意です。パレスチナの地の所有権の移転は禁じられているので、そこを不当に占領しているイスラエルは殲滅しなければならない、という論理です。  さらに第15条は、「敵がイスラムの地の一部を簒奪した時点でジハードは全イスラム教徒にとっての個人的な義務となる」と規定し、世界中の全イスラム教徒にパレスチナ解放のためのジハードへの参加を義務づけています。  米国や英国、カナダなどがハマスをテロ組織指定しているのは、ハマスがイスラエルとの和平や対話を否定し、ジハードを掲げ、武力によるイスラエル殲滅をめざし、日常的にテロ攻撃を実行しているからです。
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ハマスが「根本的かつ狂信的な反ユダヤ主義者」である理由
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1976(昭和51)年東京生まれ。イスラム思想研究者。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。『ニューズウィーク日本版』、産経新聞などで連載中。著書に『中東問題再考』『イスラム教再考』(以上扶桑社新書)、『エジプトの空の下』(晶文社)など。

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