日本で唯一の演歌師(33歳)。夢は「カーネギーホールで歌うこと」
「演歌」と聞いて多くの人がイメージするのは、北島三郎や森進一が歌う叙情たっぷりの歌謡曲だろう。だが、歴史を辿ると「演歌」とはそもそも「演説歌」の略語であり、明治時代の自由民権運動の頃、政治批評たっぷりに街頭などで歌われていたものだという。
この明治、大正期の「演歌」を平成の今に受け継いでいる唯一の「演歌師」が、岡大介氏(33歳)だ。沖縄の楽器「カンカラ三線」を手に、夜な夜な居酒屋などで流しをしつつ、寄席や落語会などに上がる芸人でもある。
まだ若い彼が、どうして「演歌師」という“世間から忘れられていた職業”に就いたのだろうか? すべてのきっかけはストリートにあった。
「20歳まではまったく音楽に興味がなかったんです。サッカーでプロ選手になることを目指していましたから。でも、当時所属していた地元の選抜チームにJ2をクビになった選手が入ってきて、そのレベルの違いをまざまざと見せつけられました。『プロをクビになった人でここまでうまいんだったら、僕にはムリだ』と人生最大の挫折を経験して、アルバイト生活に入りました。しばらくしたときに、実家にあった吉田拓郎のレコードを発見して、針を落とした瞬間に『これだ!』と音楽に目覚めたんです」
すぐにギターを買って、半年間練習。その後はいきなり井の頭公園や代々木公園などに立って歌い始めた。いわゆるストリートミュージシャンだ。同じ空間でパフォーマンスをする人々に導かれるように、ステージでも歌うようになる。毎週、ストリートで歌い、作った曲は250曲。岡林信康や高田渡などのよりディープなフォークの世界にどっぷり漬かるようになり、「日本語の泥臭さ」に魅力を感じ始めていたときに出会ったのが明治・大正期の「演歌」だった。
「同じようなタイミングでストリートでカンカラ三線を弾いている人に出会いました。このある意味安っぽい音が、演歌にぴったりハマったんですよね。演歌は『庶民の叫び』です。高級な楽器で歌うよりもよっぽどしっくり来る」
このカンカラ三線を持って、ストリートに立つようになった頃から、仕事が増え始めた。
「もともとは中央線沿線のお店で弾いたりもしていたんですが、門前仲町の橋の上で歌っていたら、お客さんが『面白いから紹介したい』と浅草のお店を紹介されたり、活動範囲が下町方面にも広がりました。立川志の輔師匠の落語会に呼んでいただいたことをきっかけに、いわゆる『色物』(落語会や寄席などでの落語以外の演芸)の仕事が増えてきたんです」
こうしてストリートミュージシャン・岡大介は、日本唯一の演歌師・岡大介に生まれ変わった。今では「ボーイズバラエティ協会」という色物の演芸協会にも所属し、「芸人」としての活動も活発だ。
「日本人のリズム」にとことんこだわる彼の夢は、「カーネギーホールでカンカラ三線一本で歌い、アメリカ人に日本のリズムで手拍子させること」と大きい。それはいつまでに達成するのか、と訪ねたら「この世界は生涯現役ですからね。100歳まで現役でいるつもりですから、いずれは(笑)」とにこやかな笑顔を見せていた。 <取材・文・写真/織田曜一郎(本誌)>
●岡大介&小林寛明「平成のんき節」
【動画】はコチラ⇒http://youtu.be/2Lz5eDppFS4
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