「ゆっくり食べると太らない」は間違い
「早食いは太る原因となる。だから、ゆっくりよく噛んで食事はするべきだ」とは、ダイエット中の食事のしかたとしてよく耳にする“定説”。しかし、あまり食事に時間をかけすぎると、逆に太る原因になることもあるという。
「食事をすることによって血糖値が上がるまでには、食べはじめてから平均20分ほどはかかると言われています。しかも、食べ物をよくかんで食べれば食べるほど、胃での消化が早まり、血糖値も早めに上がっていくので、満腹感が得やすい。だから『食べ物をしっかりよくかんで食べましょう』『早食いすると、満腹感が出る前に食物を胃に多量に詰め込んでしまうので、食べすぎのもとですよ。だからゆっくり食べましょう』というのが、ダイエットの定説になっているわけです」と解説するのは、脳と体の仕組みから絶対にリバウンドしないダイエット法を解説した書籍『何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから』が話題を集める精神科医の奥田弘美氏。
「しかし実はあまりにも長時間かけて食事をするのは食べ過ぎにつながっていくのです。なぜならば私たちの満腹感は血糖値だけじゃなく、『胃に詰まった食べ物のかさ』でも感じます。胃に食べ物が入ってくると、胃や腸の運動が活発となり、約10分後ぐらいから胃の中の食べ物は十二指腸から小腸へと送り出されていきます。種類にもよりますが、だいたい1~3時間で胃の中の食べ物はすべて初期消化が終了し、腸へ送り出されます。しかも食べ物の量によっても、胃にとどまる時間や満腹感は変わってきます。たとえば、同じ量の食べ物を一気に食べるより、小分けにして胃に少しずつ長時間かけて入れていくほうが、胃には空きスペースが常にできるために『お腹いっぱい』と感じにくくなり、かなりの量を食べられてしまうのです」
特に気をつけなければいけないのは、「コース料理」だと奥田氏は指摘する。
「フルコース料理を食べるときは、食べ物を少量ずつ盛った皿が何枚も2時間以上かけてゆっくり出てきますよね。フルコース料理は、フレンチだとだいたい1500~2000キロカロリーあるといわれているのですが、これは成人の1日分に必要な摂取カロリーに相当します。あのコース料理の皿がデザートまで含めて、一度に出てきてしまうと、多分普通の食事量の人なら、半分~3分の2ぐらいしか食べられないでしょう。時間をかけて少量ずつ食べるからこそ、胃の中に空きスペースが常に残り、かつゆっくりゆっくり食べるために食物が次々と腸に送り出されていくので、『お腹いっぱい』にならずに恐ろしいほどの高カロリーな食べ物を多量に食べきってしまえるのです。コース料理じゃなくても、一品ずつ食卓に時間差で出して食べていると、同様に食べ過ぎになりやすいのです。『血糖値上昇による満腹感を得るために食事に20分はかけなければいけないが、30分程度で食べ終わって胃に空きスペースをつくらない』『時間差で食べ物を出さず、バーンと全部並べて食べる』ということが、太りにくく満足感の高い食べ方です」
ついつい食べすぎてしまう原因は、意外なところにもある。体型をなんとかしたいなら今一度、自分の食事の仕方を見直す必要があるようだ。
<取材・文/日刊SPA!取材班>
【奥田弘美氏】
精神科医師(精神保健指定医)、日本医師会認定産業医、作家。少女時代に肥満のため「ブー」というあだ名を付けられ傷ついた経験から、「どうしたら太らない食べ方ができるか?」というテーマで若い頃からダイエット研究に熱中。医師として安全なダイエット法を吟味しながら、精神科医としての視点で「太らない人の食べ方」を考察した結果、「考え方」、「脳の使い方」に大きな違いがあることに気づき独自のダイエット法を体系づける。本書のダイエット法を自ら実践した結果、2児の出産を経て45 歳を過ぎてもBMI20、洋服は常にS~M サイズの健康スリム体型を維持している。現在は精神科医・産業医として都内20 か所の企業にて、日々多数のビジネスパーソンの心身のトータルケアを行うほか、銀座スキンクリニックではカウンセリングルームを持ちメンタルケアコーチングやダイエットコーチングを実施。心のストレスケアとともに行う安全で実践しやすいダイエット法には定評があり、ビジネスパーソンのメタボ解消や女性の健康ダイエットを日々サポートしている
『何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから』 精神科医が教える「脳で痩せる方法論」 |
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