第56回

02年2月13日「PS2が1円になる日」

・ソニー・コンピュータエンタテインメント社の発表会「プレイステーション・ミーティング」@東京国際フォーラム。メインは「プレイステーションBB」4月サービス開始のアナウンスである。BBとはもちろんブロードバンド。

・プレステ2を回線に常時接続させる。そして、いきなり世界最大のネットワーク・プラットフォームにしてしまう、というのがソニーの目論見である。対応ゲームとして『FFXI』『GTオンライン』『ネットワーク・バイオハザード』等が発表された。オンラインゲームだけでなく今後、映画や音楽のダウンロードやメールやチャット等がプレステ2上で自在に楽しめるようになるわけだ。

・さてソニーの戦略の最大のポイントは、ネットへの接続そして課金をSo-netやYahoo! BBといった各プロバイダーに任せたことだ。複数の業者がここに入ってくることで、競争が始まる。そこが狙いだろう。

・プレステ2持ってる人がそれをネットに接続したい時は、いずれかのインターネット業者と契約することになる。その申し込みはゲーム屋さんの店頭でできるようになるはずだ。客を取り合って業者さんはしのぎを削ることになる。すぐに、それぞれ大宣伝を始めるだろう。

・ちなみに現段階、漠然と提示されてる料金体系は、こんな感じだ。
1.インターネット基本使用料として、月に1500円くらい(ただしこれ、ADSL繋ぎっぱなしで2000円、てあたりが標準になっていきそう)。
2.プレステ2のネットサービス基本使用料として、月に200円くらい。プラス、個々のコンテンツ料。
3.プレステ2を回線につなぐためのユニット(ブロードバンドユニット=ハードディスク+通信ソフト)の料金として、月に1000円前後もしくは一括で買えば18000円。

・さて、携帯電話が1円で売られてるような市場原理が働けば、3.のブロードバンドユニット代は、たぶん業者さん側が負担することになると思う。つまりユーザーとしては大体月々2000円程度をベースとして支払えばいいってことになる。それどころか、そのうちPS2本体を1円とかで配り始める業者が出てくると僕は予想する。あとは、ゲームのダウンロード等、有料サービスを使うたんびにその都度、料金が加算されるわけ。大体iモードくらいの経済感覚だと思うよ。

・ソニーはインターネット業者にビジネスチャンスを提供することによって、うまく人のフンドシを使ってユーザー負担を減らそうとしてるわけだ。X-boxはハードディスクやネット端子を標準装備し、つまりこのフンドシを最初から締めてしまったせいでデカく高くなってしまったわけ。どう出るかマイクロソフト(僕にアイデアがあるけど1億円で買わない?)。

02年2月15日「飯島愛さんとのこと」

・またクソ映画を観てしまった。どれほどつまらないか観てみようなんて人がいたら嫌だから、タイトルも書かない(自分のウェッブページでゲームとか映画の評論やってる皆さん、悪口書くのは労力の無駄だと思うよ……下らない作品については、あれこれ言うより黙殺した方がいい)。

・というわけで昔の話をする。オールナイトやビデオではものすごい数のなんじゃこりゃ映画を観たが、ロードショウ公開で観た邦画で生涯いちばんつらかったのはどれだろう。と考えて『ぷるぷる』というタイトルを思い出した。飯島愛さん主演作品。

・某ゲーム雑誌の企画で飯島さんと対談することになって、ちょうど公開中だったので一応観とかなくちゃいかんだろうと思って行ったのだ。平日の午後、新宿のかなり大きめの映画館だったが、その回、ふと気付くと席にいるのは僕、一人だった。

・内容については思い出してここに書く気力はない。それでもちゃんと最後まで観て、その足で対談の席に向かった。

・さて、対談といっても飯島愛と渡辺浩弐ではあまりにも話題がなさすぎる。雑誌編集者は僕が映画見たって知ってるから、その唯一の接点から話を盛り上げようとする。しきりと映画の話をふってくる。非常に困った。

・しかし、その編集者は最初から最後まで『ぷるぷる』を『ぷよぷよ』と言い間違えていた。だから飯島さんにも無視され、結局、映画の話にはならなかった。よかったー。

02年2月17日「楽して儲けるスタイル」

・スケートのショートトラックで、前を走っていた4人が全員こけた脇をすい~っと追い越して金メダルを取ったブラッドバリー選手を見て爆笑した。昔の植木等の映画を思い出した。全世界の青少年は、あの光景をしっかり目に焼きつけといてほしい。

・金メダル確実と言われていたオーノ選手は、一緒に倒れた他の選手とわれもわれもと醜くつかみ合いながらはいずるようにしてゴールにたどりつき、なんとか銀メダルを獲っていた。そういう生き方もある。五輪とか高校野球とか僕は大嫌いなんだけど、なんか今回のはフィギュアのいんちき採点事件なども含めてスポーツらしくないところが面白かった。実人生ってああいうものなのである。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。