渡辺浩弐の日々是コージ中
第57回
02年2月18日「美女研究中」
・SPA!巻頭企画「美女研究所(びじょらぼ)」の打ち合わせ。クリエイターがグラビア撮影のプロデュースをするというあれです(僕が担当させてもらうのは3月19日発売号掲載分)。誌面上は写真と小説だけにしたいので、制作レポートはここに書きますね。
・ネットアイドルをテーマに、デジカメを使って写真ストーリーを作ってみたい、と、かねがね思っていた。今、日本でいちばん撮られ公開されているアイドルポートレート=ネットアイドル写真を、プロのタレントと、プロの写真家の技量で撮ってみたら……ということ。
・モチーフに使ったのは、昔書いた『密室殺人事件、ただし目撃者1万人』というショート・ショートだ。ひきこもりの少女が、自室に備え付けたカメラによる個人ネット放送でスターになっていく話。ドラマ化の話も頂いて実現直前まで行ったが、痛々しい結末に局側が難色を示して、結局ボツった。
・ネットアイドルなんてものが現実に出てくる前に書いたものだったが、今ならもっとわかりやすい話として成立するかもしれない。そして、この話は映像よりも、むしろグラビアのリアリズムにぴったりである。となるとモデルは「いたわし系」美少女に限る。ということで蒼井優さんにお願いすることに。
・今日は担当編集者・樋口さん、カメラマン松木さん、それから蒼井優さんも、事務所まで来て下さった。おかげで、すごく明確なイメージをもって打ち合わせを進めることができた。
・蒼井さんは1985年8月生まれ(っていったらちょうどファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』が発売された頃だ)。黒目がちのあのきれいな目で、相手をまっすぐ見る。見つめられると、なんだか夢から覚めたような気分になる。もし彼女の意識に入り込むことができたら、自分自身のその目をじっと見つめていたい。そんなことをふと考えた。そうだ。その感じでいこう。
*撮影現場のレポートは掲載誌発売のタイミングにアップします。
02年2月22日「Xboxをレビュー」
・Xbox出ましたね。ビル・ゲイツさんが来日して大騒ぎになってるみたいだけど、僕はゲイツよりゲイムを見たいので、マイクロソフト社を訪ねた。Xboxの初期タイトルを一通りプレイさせて頂く。
・すごい機能を持ったマシンだということは一目瞭然である。どのゲームも、Xboxに来てちゃんと進化している。『鬼武者』は操作系がさらに高度化していて、『DOA』は女の子キャラの乳揺れがリアルになってて『ジェットセットラジオ』は街のマップが広くなってて……しかし、そういうことだけでは不足、というのが正直な感想。それくらいの変化では、よほどのマニア以外はテレビの前のマシンを繋ぎ換えるところまではいかない。今必要なものは完全オリジナル作品。プレステ2もゲームキューブも既にあるゲーム界に今Xboxが出てきた理由になるような、圧倒的な新しさだ。
・そういうゲームがあるかというと……あった。『HALO』だ。
・3D空間の中をエイリアンを退治しながら進攻してゆくゲーム。CGドラマや多人数対戦機能よりも、僕はこのゲームにおける「連続性」に瞠目した。例えば10匹いる敵のうち7匹を殺して次の部屋に進む。ずいぶん後になってからまたその部屋に戻ってきても、ちゃんと残り3匹のエイリアンが襲ってくる(今までの家庭用ゲームではドアを一回開け閉めするだけでまた10匹に戻ってたりしたでしょ)。こういうシステムのおかげで空間のリアリティーが倍増している。
・家庭用ゲーム機として初めてハードディスクを標準装備したXboxゆえに実現できたゲームデザインだ。ゲーム誌のライターさんはパソコンゲームもやり尽くしてるマニアの人が多いから、これは珍しいことでもなんでもないことだろう。しかし、日本のゲーマーの9割以上は家庭用ゲームだけで遊んでいるのだ。
・アメリカではパソコンのアクションゲームの歴史があるから、このタイプのゲームは既に一大ジャンルとして定着している。『HALO』のクオリティーは、その土台の上に生み出されたものといえる。しかし日本では、この作品はX-boxならではの斬新なゲームとして受け入れられる可能性がある。
・Xboxの日本での売れ行きはとてもゆるやかみたいだけど(アメリカでの約1/10のスピードらしい)もしブレイクするとしたら『HALO』の発売タイミングがチャンスだ。マイクロソフトは、このゲームの日本マーケットにおける価値をきちんと認識するべきだ。この1タイトルが100万本売れたら、XboxはもうOKだと思う。その後はゲームボーイやプレステと全く別の領域を自動的に獲得することになるだろう。