渡辺浩弐の日々是コージ中
第62回
02年3月29日「日本には田圃がある!」
青山真治監督作品『月の砂漠』試写会に行ったら、この映画のプロデューサーの仙頭さんに会ってしまった。仙頭さんからこないだ「僕は映画は必ず金払って見る」と聞いてた矢先だったのでとても気まずかった。すみませんただで見せてもらっちゃいました……。
さて映画の方は、ITバブルにのって株式公開を果たした若い起業家(三上博史)が、突如訪れた破滅を受け入れつつ真実を探してもがく姿を描いた作品。ITバブルとその崩壊を、一つのブームの去就としてではなく、資本主義の終焉を象徴する出来事として捉えている点に強く共感できた。
「資本主義ももう終わり」と言い捨てるのは簡単なことだが、今深刻なことはそれに代わる別のシステム、別の生き方が見つかっていないということである。そのヒントを日本の田舎の美しい風景の中にちらりと見せた青山監督の狙いはとても面白い。
02年3月31日「いじり続ける」
CGカーニバルというイベントで、秋元きつねさん、アミーガ・トオコさんとトークショウ。トオコさんとは初対面。作風からはもっと年長の豪快おばさん風をイメージしていたんだけど、十代の少女のような感じの人で驚いた。アミーガ全盛期には小学生くらいだったんじゃない?
秋元くん、ずっとゲーム作ってたんですね。まだ発表日前でステージ上では言えなかったけど、もちろんあの『せがれいじり』の続編といえる作品(『変珍たませがれ』プレステ2対応、6月27日発売予定)。またとんでもなくバカで楽しいゲームのようだよ。完成間近らしいけど、まだまだいつまでも作り込みたい、って。CG作っている時がとにかく至福で、眠ったりごはん食べたりしなくてもいいくらいだという。そうだ楽しい作品は楽しんで作られるべきなのだ。
さてCGカーニバルでは各CGクリエーターが思い思いにブースをデザインして作品を展示する。かなり大がかりな仕掛けも多い。しかし入場料収入なんてたかが知れているから、どう考えても相当な赤字のはずだ。どこからそんなお金が出てるんだろう……と、ずっと不思議だったのだが、今日、控え室でプロデューサーの女性実業家の方と話をすることができて、謎が溶けた。
話変わるが今年も前期、早稲田大(大学院)で講義を受け持つ。もぐりたい人は自分で方法を見つけて来て下さい。
02年4月2日「ワークシェアリングよりタイムシェアリング」
鹿児島の長寿世界一のお婆さんは「2日寝て2日起きる」、つまり1日96時間サイクルの生活なんだそうな。彼女の中では時間は普通人の1/4のスピードで流れている。だから120歳でも実際は、その1/4の30歳ぶんしか年とってないわけ。
さてこれで持論が証明された、と僕はイバりたい。というのは3年くらい前に某新聞に「1日48時間」というエッセイを書いて、かなり叱られたことがあるからだ。「寝たいだけ寝て自然に目が覚めた時に起きることにした。すると、やがて自分なりのペースができてきた。それでわかった。僕の1日は48時間サイクルだった。つまり人の1/2のペースで生きているわけだから、人の倍(160歳くらいまで)長生きできる計算だ」てな文章。
そういえばガクトさんもガクト時間(1日30時間サイクル)で生きてるって、どっかで言ってた。最近はみんなで同じ時間帯に集まらなくても勉強も仕事もできるようになっているのだから、自分の時間で健康的に生きてみようよ。