第64回

02年4月12日「チュンは中村さんの”中”だが、中さんの会社はソニックチーム。チュンソフトの関連に”ピカイチ”という会社もあるが、光一の光は新幹線ひかり号の光」

・中村ピカイチ社長と、それからチュンソフト開発部の山田信哉さんと会う。主にオンラインゲームやコンテンツ配信について、いろいろと情報交換。サウンドノベルという企画にいかに先見の明があったか、今つくづく思い知らされる。

・国はこの会社に10億くらいぽんと出して『街2』を作らせるべきだ。

02年4月13日「若気のイタリア」

・イタリアでいよいよクローン人間第1号が生まれそう。クローニング技術の人間への適用については、僕は賛成。ただし問題は、人間はまだ、人間を取捨選択するだけの叡智を身につけていないということにある。頭がよくて容姿がよい人間に価値があるのか。じゃあ頭の良さって何だ。容姿の良さって何だ。

・でも、過去数10億年そうだったように偶然にまかしておくよりずっとましだとは思う。ただし多種多様なDNAをバックアップするためのバンクの設立は本当に急務だ。

02年4月14日「1984年に生まれて」

・新宿歌舞伎町ツアー。報道されている通り、いたるところに監視カメラが設置済み(歌舞伎町内に約50台らしい)。こういうのって最初は気になって仕方がないものだが、そのうち風景にまぎれて誰も気にしなくなるだろう。自分の部屋の中に覗きカメラを仕掛けさせるバイトをしている女の子の話を聞いたことがあるけど、そういうものらしいよ。

・今後、繁華街だけでなくありとあらゆる場所にカメラが設置されていくはずだ。これが映像検索システムと併用され、個人のプライバシーは様々な角度から暴かれていく。例えば特定の顔の写真を使って歌舞伎町の映像を検索すれば、その人物がいつ、どこに出没したか、そのシーンの全てが検出されるわけだ。

・ラブホテルの前に仕掛けたカメラの映像を1カ月ぶんくらいためて、そこから「複数回来た人、さらに、その都度パートナーが変わっていた人」を検出することくらいは、全自動でできる。そういうところから犯罪をあぶり出すことも、恐喝のネタを探し出すこともできる。

・これが、21世紀の現実。この動きについては、泣こうが叫ぼうが止めることはできない。対抗策は、ただ声を荒げて反対することではない。僕ら一人一人が、超小型カメラを手にすることだ。僕らのプライバシーを撮ろうとする奴等の姿をこちらからも撮ることだ。

・きょろきょろしながら繁華街を歩いていると、客引きしてる女の子に「渡辺さんでしょ」と声をかけられた。「小学校の頃PCランド見てましたぁ」と。年を聞いたら「1984年生まれ」だって。彼女はてのひらの中のケータイで僕の顔をパチリと撮って、ゲームマニアだと言う友達に写メールしていた。これも、21世紀の現実。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。