第65回

02年4月26日「チップ3」

・(前回分参照)……てなことを考えてる矢先に「中古ゲームソフト販売」が「合法」との最高裁判断が出た。この影響を短期でみると取りあえずはショップとユーザーが活気づき、それによってメーカーも得をすると思う。中期でみるとゲームのネットワーク対応が加速するだろう。中古流通がどーしてもイヤだというメーカーは、ネットワークへの移行を急げばいいのである。長い目で考えると、重要なことはデジタル作品の著作権価値をユーザーに認識してもらうことだと思う。それをベースに新しい課金の方法をいろいろと試していくべきだ。

・中古ショップを活用するようになればなるほどユーザーは、ゲームを遊ぶ時何にお金を払っているのか、自覚することになる。中古流通がただ無闇に無節操に促進されていきメーカーが立ち行かなくなったら、ショップも成立しなくなるし、最終的に損をするのはユーザーなのだ。

・例えばドラクエは過去の全作品が中古で100円とかで売られていたとする。そういうのを買って遊べば十分じゃん、てな風潮がまん延してしまったとする。それでも、オレは次のドラクエを遊びたいからそのために10万円出すぜ、という人達がたくさん出てくるはずだ。そういうキモチをどう資本主義のプロセスに組み込むか、それが課題

・ところでこの件について産経新聞にコメントしたので当該記事を読んだら、すごく真面目な文章の中に唐突に「最高裁が『中古でGO!』のお墨付きを出した」なんて。新聞もう4紙取ってるけど、産経も定期購読することにした

02年4月27日「転職の企み」

・中野ブラッドウェイいや中野ブロードウェイに、毎日通っている。実は物件を探しているのだ。ここ、本当に月7万も出せば店が持てるんだよ。

・メーカー側にも得になる中古ゲームショップのアイデアがある。定価よりも高く売れる中古ソフトだけを扱うのである。ゲームソフトのビンテージ価値をはかるというか。その方法は、まだ内緒。

02年4月28日「略してちんたま」

・秋元きつねさんの『続せがれいじり 変珍たませがれ』サンプル版をプレイ。論理のたがを外れた世界。不条理な夢から目覚めた瞬間の気持ち良さ(気持ち悪さ)。これは、ゲーム中ほとんど全ての映像、そして音楽や声までを秋元氏1人でこなしているからこそ、実現したものだと思う。

・つまり制作の過程でシナリオを書いたり、コンテを作って他のスタッフに説明したり、そういう作業をすることによって論理や常識から外れた脳内イメージは、振り落とされてしまうものだ。自分の脳の中のイメージを言葉にすることになく、とにかく思うままパソコン上でざくざく作り上げてしまう、そういう、インデペンデントな制作スタイルの可能性を実証してくれる一作である。

・コトバを組み合わせることによって世界を広げていく、というゲームシステムが、コトバの限界をあらわにしてしまうところがすごく面白い。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。