第105回

03年2月25日「枕にもなる」

・三軒茶屋のエンターブレイン社に。新刊『2999年のゲーム・キッズ完全版』が刷り上がっていた。わーい。100人の視点から描いた100本のショート・ショートを組み合わせて1本の長編にする、という試み。10年くらいかけていろいろな方法で書き続けてきたものが、ついにまとまった。自分の本当に大切な人に1冊だけ読んでもらえるとしたら、この本を渡す。

・2段組にして、それでも460ページ超の分厚い本。装丁も凝った。ネットもブックオフもある時代、紙の本は特別な価値観を持たなくてはならないと思い、版元にも理解してもらったのだ。編集者、デザイナー他スタッフの方々のご尽力にも大感謝。ありがとうございました。

・表紙は、デザイナーさんがタイまで行って撮影してきた蓮花だ。

03年2月26日「鳥山明さん」

・「ジャンプデジタル漫画賞」の審査で、鳥山明先生に会う。とても気さくで、腰の低い方だ。そして若い。新人のふりをしてどこかの出版社に持ち込みに行けるくらい。

・編集の方々も一緒に、マンガのデジタル化の可能性について、話し込む。気持ちが明るくなってきた。日本は大丈夫だと思えてきた。大げさかな。

03年2月27日「倉田真由美さん」

・SPA!の企画で、倉田真由美先生と対談(3/25発売号に掲載予定)。びっくりするほどきれいな方だった(って、これもしかして常識なのかな)。

・デジタル系のことは苦手なふりをしておられたが、実はパソコンについても、プログラミングまでできちゃうほど詳しいってことが話してるうちに明らかに。能ある鷹の爪を隠す自己演出のうまい人こそ売れるのだ。関係ない話だけど、中村うさぎさんって昔は人気ゲームライターだったんだよ。

03年2月28日「日野日出志さん」

・「マンガジャパン」のパーティーに。「デジタルマンガ協会」の設立発表会もかねているということで、木ノ花さくや先生に誘っていただいたのだ。

・デジタルによるマンガ制作を手がける作家同士で技術やノウハウを共有化していこう、という趣旨の協会らしい。また作品のデジタル化に伴って発生する新しい著作権問題にも取り組んで行くという。

・日野日出志先生に会い、15年前、神田のホラービデオ屋さんでサインしてもらったお礼を言うことができた。この数日、いろんな意味ですごいマンガ家さんに次々と会うなあ。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。