第106回

03年2月28日「せっかくの技術を生かす」

・フジテレビのCG制作部主催によるイベント「デジタルメディアカーニバル」に。

・番組用の映像制作以外の活動についていろいろとプレゼンされていて、興味深かった。VRインターフェイスを活用したCGキャラクター手話システムや、音楽コンサート演出のノウハウを活用したクイズ番組のライブ演出システム、等。

・フジに限らず、バブル期にお金をかけて研究開発してきた技術を具体的な仕事に適用する試みが各局で行われているようだ。いい感じで成果が出てくる頃合いか。

03年3月3日「不評覚悟で撮る贅沢」

・『スパイダー』試写。デイヴィッド・クローネンバーグの映画は、「正気の視点から狂気の世界を描く」パターンと「狂気の視点から正気の世界を描く」の2種類。前者は100億円くらいかかるが、後者は(多分)1億円くらいででき上がる。前者はエンターテインメント性の高いSFX映画になるが、後者は超フェティッシュなカルト映画になる。前者の例『ザ・フライ』。後者の例『クラッシュ』そしてこの『スパイダー』。

・言うまでもなく、クローネンバーグが本当にやりたいのは後者のパターンなのである。

03年3月4日「軍事予算出てる?」

・映画『007/ダイ・アナザー・デイ』。例によって徹底的にエンターテイメント。ボンドの新車のとんでもない機能や、敵の操る究極兵器「人工太陽」など、現実に最先端で研究されている技術をもとにシミュレートされている。こういうところが好きだ。

・映画って洗脳力強いから、これ見てるとアメリカ(とイギリス)がどんどん正しく思えてくる。常任理事国の皆さんにはできれば今は見てほしくない。

・ところで今回の敵は北朝鮮なんだけど、この映画見てるとアメリカもイギリスも日本のことなんかどうでもいいということがよくわかる。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。