第114回

03年4月29日「お隣さん」

・中野ブロードウェイといえばやはり「まんだらけ」である。引っ越しソバくらい届けたらどうですか……と、名物編集者の梶原氏が提案してくれた。

・梶原さんは今、SPA!増刊という形で新コンセプトの雑誌を作っている。その中で、まんだらけの古川社長と僕の「中野系」対談を企画してくれたわけである。

・「中野ブロードウェイ」という特殊な場の力について、かなり面白い話ができた。古川氏の発するパワーはすごい。この場所に新たに仕掛けようとしている数々の仰天プロジェクトは、新雑誌のスクープになったと思う。なにせ地下プロレスなんて話まで出てきたのだ。

・911テロの影響で中断してしまったが、まんだらけにはLAに続いてNYへの進出プロジェクトもある。中野にブロードウェイがあるのだから、ブロードウェイにも中野を作ってしまえばいい。

03年5月1日「寿命縮む映画」

・『地獄甲子園』試写。あの漫☆画太郎作品の映画化。こんな企画が通ってしまったのはやはり『少林サッカー』効果だと思う。この映画がヒットしたらその後のことも楽しみだ。すさまじいほどに荒唐無稽なギャグが、マンガを通じて、日本のある世代には日常だった。
層の厚さは半端じゃないのだ。このセンスの映像化に成功すれば日本は実写映画でもハリウッドに対抗できる……なんて大げさだけどね。

・内容は、予想通りのむちゃくちゃさだ。『少林サッカー』にないポイントはビンボーくささで、画面はとても汚らしい。しかし漫☆画太郎のマンガと同じく、それがすぐに気持ちよくなってしまう。小さな子供に見せても喜びそう。

03年5月5日「超特大テレビゲーム」

・平沢進さんのコンサート『LIMBO-54』に。昨年度のデジタル・コンテンツ・グランプリで最高賞を獲得したインタラクティブ・ライブだ。舞台が半透明のスクリーンに覆われていて、現実の平沢さんの姿にスペシャルエフェクトが加えられる。またデジタルのインターフェイスによって、観客の反応がステージに、CGやサンプリングサウンドとして反映されていく。

・その「場」性が重要な要素だ。言い換えれば、ライブに来なければこの本当の凄さはわからないのだ。DVDにすればそれでいいってもんでもない。うーん、ディズニーランドのようになんとか一般化できないものだろうか。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。