第158回

3月28日「ルーキーに向けて」

・「TAF(東京国際アニメフェア)2004」。第3回目にして世界屈指のアニメ見本市に成長したことは本当にめでたい。ただし、このイベントはあくまでも東京都の施策であることを忘れてはならない。つまり、ここではアニメが地場産業としての価値を扱われていることに意義があるのだ。

・東京のアニメは世界の注目を集めている。産業としてすぐ目の前に大きなチャンスが見えている。これを逸しないために今最も重要なことは、優秀な作家が専業で「食べていける」状況だと僕は思う。

・だから今回は、インディーズのCGクリエーターに場を提供した『クリエーターズワールド』と、若い人とプロをつなぐ交流の場として設定された『アニメルーキーズ』の2企画が興味深かった。アニメルーキーズでは若いクリエーター向けのトークライブも行われ、僕も出演した。「デジタルマンガの可能性」というテーマで、なかなかディープな話ができたと思う(ここで事前告知しておけば良かったのだが、僕もTAFのホームページを見て初めて『渡辺浩弐が出る』ことを知ったのである)。

3月29日「そろそろ具体的に」

・デジタルコンテンツ協会に。当欄でも何回か途中経過を報告してきた経産省の公募プロジェクト「ブロードバンドコンテンツのブレークスルー技術等開発支援事業」についての報告会。

・ブロードバンド関連の全く新しい事業がここで19件、立ち上がった。それも単なるプレゼンテーションやプロトタイプとしてではなく、具体的なビジネスとして。成果は ネット上でかなり詳しく発表されているので、ぜひご覧頂きたい。日本のブロードバンドコンテンツ産業はこんな感じで立ち上がっているという実例がここにある。→http://www.broadband.dcaj.or.jp/

・ところで審査員の一人、森田貴英さんは週刊文春の件で時の人になってしまった弁護士である。面白いのでしつこく話を聞こうとしてうるさがられてしまった。

3月30日「アメリカの恐怖」

・『ドーンオブザデッド』試写。ジョージ・ロメロ監督のオリジナルは今見直すと叙情性もある作品なんだけど、これは腹にドーンと来る怪作。ゾンビがとにかく異常にパワフルなのだ。全速力で駆け回り、飛びかかってくる。

・ゾンビ映画は若い才能がそれぞれの持ち味を生かせるジャンルとして重要だ。そして深読みするとその時代ごとの恐怖を映し出す鏡としても機能する。かつてのゾンビは弱くてしつこいところがすごく怖かった。最新のゾンビは強くて、しつこい。

・アメリカはかつてベトコンに対する恐怖によって戦争に負けた。今は例えばアルカイダの恐怖と戦っているわけだ。ただしアメリカがいちばん恐怖することは変化していない。相手が「恐怖を感じていない」ことだ。そう考えるとゾンビ映画って本当に普遍的なのである。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。