第233回

10月5日「この視点から」

・デジタルコンテンツ協会スタッフの方々から“デジタルコンテンツグランプリ”審査のレクチャーを受ける。今回で20周年を迎えるという。この業界で最も経験値の高い表彰システムといえるだろう。

・経済産業省が後援していることもあり、産業振興につながる作品やサービスを推すという意図が強い。市場活性化につながる作品を見つけてプッシュしていく。と、いうことはすなわちブームの先取りをすることになる。『mixi』も『電車男』も、去年の段階で授賞しているのだ。こういう視座の審査は結構緊張するものである。

10月6日「家なら思う存分!」

・バンダイを訪問。『ドラゴンボールZ・バトル体感格闘かめはめ波』のサンプル版を借りてきた。ゲームショウ・レポートの中でもちょっと紹介した(テレビの前に手を向ければ「かめはめ波」が出せるっていう)あれです。秘密は、両手の指に取り付ける形のコントローラーだ。

・特定のゲーム機に対応したソフトではなく、ハードとソフトが一体化した筺をテレビにつなげばすぐに遊べる形体。それでソフト1本ぶんくらいの価格である。この自由さがあるから、コントローラーの形もゲームに合わせられるわけだ。ドラゴンボールは今でも小学生男児人気1位のキャラクターだが、この製品は30代以上のDB第一世代にも売れると思う。その世代って、ゲーム機をテレビにもう繋いでいないっていう人が多いんじゃないだろうか。新ハードを買ってきてセットアップしてソフトを選んで入れて、という作業が面倒になってきてるのである。

・このマシンに使われているのは初代ファミコンを作ったメンバー(!)が開発したXaviXというチップである。スクエニの『剣神ドラゴンクエスト』やタカラの「e-kara」等これを活用したヒット商品は既に多い。見えないところで普及している次世代ゲーム機といえるかもしれない。バンダイにはこれを使って今後もいろいろと面白いものを作っていく計画があるようだ。

10月7日「小説家モード」

・『ファウスト』用ショート・ショート9本を無事入稿。次は『メフィスト』用の中篇。かなりのテンションが必要な仕事だとわかっていて、なかなか取りかかれず。しばらく通信環境から離れて籠もろうと計画。チケットを取った。

・けれども資料を大量に持っていくのはつらいから、出発前にできるだけ読み込んでしまおう、それからアイデアメモも整理して少なくしておこう、などと、どたばたやっていたら、結局、小説、仕上がってしまったよ。資料持っていく必要どころか、行く必要も、なくなっちまった。どうしよう。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。