第266回

6月9日「缶コーヒーとTVゲームの日々」

・人間ドック。異状なし。というか僕はもう30年間、身長も体重もB・W・Hも
全く変わらず、高一の時に買ったパンツをまだ履いている。血液などの検査結果
も、全ての数値に変化なし。主食にしているカップヌードルと、1日7~8本飲ん
でいる缶コーヒーのおかげだと思う(これは冗談ではなく、本気で書いています)。

・最後に栄養士の講釈を受けさせられたが、ダイエットとかカロリーコントロー
ルとか巻き舌で言うその栄養士さんがものすごく太っておられるのでシュール
だった(体型で人を差別することは政治的に正しくないかもしれないが、職業に
よっては自己管理も義務なのではないか)。

・そしておなじみ「缶ジュースがいかに身体に悪いか」という話。なぜなら砂糖
がたくさん入っているから、と。「炭酸飲料は一缶の中にはなんとシュガース
ティック12.5袋ぶんの砂糖が入っているんです! こんなもの飲むからカロリー
取りすぎるんです!!」 前にも書いたけど、スティック12.5袋で152キロカロ
リー、すなわち小さなおにぎり一個ぶんくらいのものなのである。

・砂糖イコール「悪」だとする風潮が医学界にまで蔓延してるのはおかしいと思
う。甘いものは良くない、という言説は、実はちっとも科学的ではなくて、この
国の因習の一部分を成す「禁欲主義」から派生したものだ。つまり、若い者にあ
んまり気持ち良い思いをさせたくない、なぜならクヤシイから、という年寄りの
たわごとから来たものなのである。ゲーム脳の話に似てますね。

6月10日「日記だらけの時代」

・SPA!のウェップがリニューアルをスタートした。このコーナーも今後ブロ
グにしていくか、あるいはもっと別の形にしていくか、新担当のおさむ氏と話し
合ってじわじわ改良していくつもりです。よろしく。

・SPA!はネットとの相性がとても良いと思うので、サイト全体の進化にも期
待している。雑誌や新聞のウェッブページは、単なる広報サポートの役割から一
歩進みつつある。それ自体がコンテンツ発信元になり、さらには収益をあげてい
く道筋がみえてきているわけだ。

・ところでよく「渡辺さんはあまり本を読んでいないようだからもっと読みなさ
い」なんて指摘されたりするんだけど、ここは個人的な日記とはちょっと違うん
です。個人的な日記は別に書いているけど、それは一生公開する予定はない。は
ずかしいから。

・昨今、ネット上にコラムや日記を書いている人はとても多い。複数のSNSに
加入しブログを同時に二つも三つも書き続けている人もよく見かける。それは良
いことだと思うけど、それらとは別に、自分自身の個人的な日記は書くべきだと
思う。ネット上のコンテンツは公道上に出している店と同じだ。店先での雑談な
らたいていのことは大目にみられるだろうけど、店に並べたものや店員の口上に
ついては、ある程度の社会性が求められる。それで、知らず知らずのうちに現実
の自分が縛られていくのではつまらない、でしょう?

・ところで「このブログは私が個人的に楽しんで書いているだけのこと」なんて
言い草は、公道で性器を露出して「個人的な楽しみのためにやってることですか
ら、見たくない人は見ないでください」と言ってるのと同じだ。

6月21日「韓国映画『トンマッコルへようこそ』試写会にて」

・かんこくは せんご かんじを すて はんぐるという ひょうおんもじだけ
を つかっていくことを きめた。つまり にほんの かんかくでいえば こん
なふうに ひらがなだけで すべての ぶんしょを かく そんなしゃかいに 
いきなり なったわけだ。それは ぶんめいてきには しっぱいと いわれるこ
とが おおいが ぶんかてきには あるおもしろい とっしゅつを うみだし
た。はんりゅうえいがは その よいれいだ。

・さて このえいが。やまおくの へいわな むらで てきどうしの へいたい
たちが ぐうぜん はちあわせし いっしょに くらしはじめる。そこで たち
ばを こえた こころの こうりゅうが はじまる。ちょうせんせんそうせんじ
かの せいじてき みんぞくてきな こんめい。そこにおける べつべつの か
ちかんと ぶんかの ぶつかりあい そしてひとりひとりの じじょうと ここ
ろのうごき。そういう ふくざつな じょうきょうを はいけいに しながら 
いっさい せつめいてきに なることなく さいしょから さいごまで わらわ
せ なかせ かんどうさせつづける。この きめのこまかさ わかりやすさは 
どうだろう。

・このえいがの しなりおが すべて ひらがなで かかれているとしたら い
や こういう ものがたりを ひらがなだけで かける そんな はなれわざを
 もった じんざいが いくらでも いると かんがえてみたら なんとなく 
ふにおちるのだ。せかいじゅうの ひろいそうに いきなり うけいれられ 
ひょうかされた かんこくえいがの こくさいせい。むかし ひらがなと せい
ぜい かたかなくらいしか つかえなかったじだいの「ふぁみこん」は そうい
えば すごい こくさいせいを もっていましたよね。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。