第282回

10月15日「ウェッブ2.0にひっかかるな」

・ミクシィ株暴落の本当の理由を裏側まできちんと調べて報道する経済記者はい ないのか。個人情報問題は確かに企業リスクだが、三面記事的な騒ぎだけで株価 が瞬間的にあれほど影響を受けるものではない。

・ウェッブ2.0という言葉を揶揄するべきではないと思うが、その本質は明らか にずれてきている。主体はあくまでも「個人」であり、それは巨大さを志向する 資本主義と相容れないものなのだ。そもそも「ウェッブ2.0の波に乗って株式公 開」って、これ、すごく矛盾してる言葉ではないか。

・効果を曖昧にしたまま巨額の媒体費を動かすテレビCMのビジネスモデルが崩 壊することによって、広告代理店は巨大な狩り場を失うことになる。が、今イン ターネットがそれに代わると考えられている。ネット広告をこつこつ集めていこ うという話ではない。「ウェッブ2.0」という言葉を利用する錬金術があるのだ。

・その方法。→まず、「ウェッブ2.0」ぽい会社(サイト)を見つける。  →ダミーのベンチャーなどを使って出資しておく。  →そのサイトに広告をがんがん出稿し、儲かってる風のシートを作らせる。 →その売上を裏付けにして、株式公開させる。  →すぐに売り抜ける。 ……と、これでなんと数十億の利益が手元に残るわけである。

・もはや形骸化への道をひた走っている株式市場に、この(偽)ウェッブ2.0バブルが始まろうとしている。インデペンデントのサイト経営者には、この動きを さらに逆手に取るようなスタイルを薦めたい。


10月16日「虫を逃がすな」

・日本の昆虫は美しい。ヘラクレスオオカブトを飼うよりセンチコガネを飼えば いいのにと思う。まるで宝石のようだ。餌は犬とか猫の糞で良い。

・輸入昆虫のブームが続いているが、この時期、世話がイヤになって逃がしてし まう人がいる(外国産の大型甲虫は何年も生きるものも多いが、越冬にはとても 手間がかかる)。そのせいで今、生態系がマジで危機に瀕しているらしい。これ はムシキング世代ではなく、そのお父さん世代、それも子供の頃にあまりゲーム をやんなかったたぐいの人達のせいだ。

・昆虫をキャラクター化したゲームで遊ぶことと実物の昆虫を飼うということは 違うということを、子供達は、はっきりわかっている。ところがそのお父さんが 寄ってきて、画面を見てこりゃヘラクレスだとかノコギリだとか蘊蓄を語りはじ める。もしかしたら子供と会話のきっかけがつかめるかもなんて思い立って、そ して森に行くのではなくデパートに行ってしまうのである。ゲームをやっていな い人の方が、リアルとバーチャルを混同しやすいのだ。

10月17日「猫を捨てるな」

・ペットにして許されるのは、最後まで責任を持って飼うか、そうでなければ 「食う」覚悟を持てる生き物だけだと思う。子猫を捨てたり殺したりするような 人は、ネコではなくブタを飼えばいいのである。飼えないぶんは殺して食べてし まっても、誰も文句は言わないだろう。

・『ムツゴロウ動物王国』がやばいらしいが、あそこにいる動物達については、なんの心配もいらない。どうしようもなくなったら畑正憲さんが責任を持って、食うだろうから。

・畑さんの本を読んでいると、実験など人間側の都合のために殺してしまった生 き物をしばしば料理して、食べてしまうという描写がある。トカゲとかコウモリ とかネズミとか、ナメクジやハエまで……ユーモラスな描写の中に、そこに「供 養」のそれもとても原始的な意図がさりげなく書かれていたりして感心するので ある。

2006.10.23 |  第281回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。