第288回

11月26日「Wii考察」

・Wiiは多人数でプレイするゲーム機としては無敵だと思う。ほんっとーに楽しい。ただし一人で延々と遊び続けるのはちょっと寒いかな。ゼルダにしても、長時間続けているとやっぱりゲームキューブ版(オンライン販売のみ)の方がいいと思ってしまうかも。任天堂は、「一人で遊ぶのはDS、みんなで遊ぶのはWii」と割り切っているのだろう。

・それから本来のゲームマニアには、Wiiリモコンの操作感覚は大味に思えるかもしれない。マニアは、理論上の限界値としてのハイスコアを望む。1/60秒1フレーム単位での正確な入力を求めるのである。そのための最も緻密なインターフェイスとしては、パッド型のコントローラーはやはり優秀だった。

11月27日「夢より面白い映画はあるか」

・アニメ映画『パプリカ』見る。他人の夢に入り込み無意識の世界をモニターする装置”DCミニ”が何者かによって盗まれる。人々の深層心理に侵入しては狂わせていく謎のテロリスト に立ち向かうべく、夢探偵パプリカが悪夢の中に入っていく。原作は筒井康隆氏。あの断筆直前、実験的な小説を盛んに書いていた90年代初頭の作品だ。自ら今敏監督にアニメ化をそそのかしたものらしい。

・絢爛なる夢世界が緻密にカラフルに表現される。ただし幻覚と現実が溶けていく描写は、今監督としてはこれまでさんざんやってきたことである。あまりにも手慣れているからこそファンとしては新鮮味を感じられず、物足りないかもしれない。

・しかし、これは欧米の、アニメマニアではなく映画のファンに見せたい。日本には小説の世界にもサイバーパンクSFの土壌があり、それが先端のアニメクリエーターの手に掛かる時どれほど輝くものか、知ってもらいたいのだ。

11月30日「ゃゃ内緒ですが」

・講談社BOXの太田さんと柴山さん、刷り上がったばかりの『ィキル iKILL』(講談社BOX)を持参してくれた。

・店頭に並ぶのは4日夕刻あたりからのようです。なんでわざわざ書くかと言うと、できれば初版を確保して頂きたいからです。挟み込まれている「あるもの」をよく見て下さい。面白い目に遭うことができるかもしれません。

2006.12.04 |  第281回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。