第289回

12月4日「このサイトに名前を書かれた人間は死ぬ」

・『ィキル2.0』サービス、スタート。『ィキル』を読んでくれた人に、さらにもう1作品ぶんのコンテンツを、ある体験として提供するというものです。

・店頭にはこんなPOPも置いてもらっていて感謝。ええと、まだお気付きでない方、ケータイを手に、名刺型しおりの、裏までよーく見てみてください。


12月5日「ケータイ小説ブームの発火点」

・ドワンゴの稲葉氏とミーティング。『魔法の図書館plus』というサービスを担当されている方だ。

・インディーズ作家が書いた小説をケータイで読めるポータル『魔法の図書館』から今ヒット作品が続々と生まれている。『恋空』のように、書籍化されてミリオンを記録したものもある。こことリンケージして、注目作品をさらに読みやすく加工して有料配信する公式サイトとしてオープンしたのが『魔法の図書館plus』である。

・ここに入れば、個人でも課金しながら作品を公開し続けることができる。小説家になりたい人は、今なら書いた作品をさっさと『魔法の図書館』で公開、人気を得て『魔法の図書館plus』入りを目指すという方法があるわけだ。

・インディーズとメジャーが、個人とマスコミが、ひきこもりの部屋とビッグステージが、地続きになることは重要だ。

12月6日「匂う映画」

・『パフューム ある人殺しの物語』試写。18世紀フランス。超人的な嗅覚を生まれ持った主人公が、社会の最下層からはい上がって香水職人=調香師になる。

記憶の底にある匂いを追い求めるうちに、やがて禁断の方法を用いての香水作りを始める。

・メディアに記録できない感覚「匂い」を表現する映像が美しい。腐肉、ウジ虫、血液、少女達の髪、肌、汗……。匂いはデータ化されないゆえに歴史に残らないわけだが、往事のヨーロッパでは調香師という職業が高いステイタスを認められていた。彼らは音楽家が和音を並べていくように原液を調合し、作品としての香水を創り続けた。

・この映画の強烈なメッセージは、素晴らしい才能は努力や環境とは関係なくいきなり生まれる、ということだ。才能のない人は努力だけで到達できる領域で二流の人生を生きるしかないのか(そんな、アマデウスのサリエリにあたる役をダスティン・ホフマンが好演している)。それとも、自分が天才となりうる領域を探し続けるべきなのか。

2006.12.11 |  第281回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。