第345回

1月12日「濃縮した地球を味わう場所」

・『アース』を見た後で博物館デートなんて、どうだろう。国立科学博物館は、3年がかりで改修された「日本館」がオープンして、ますますおすすめである。こういうところはいつでも行けると思うとなかなか行かないものだから、特別展「大ロボット博」期間中(27日まで)に一度、どうですか。

・ここはお役所仕事の商業性のなさが良さになってる珍しい例。博物館って売りになる展示物を押しだそうとするあまり脈略がわかりにくいものになりがちだ(特にバブル期に建造されたり改装されたりしたところにひどいものが多い)。しかし特に日本館は、テーマを国内の事象に限定することによって、親しみやすさと、考えやすさを演出することに成功している。日本でも、各地で首長竜や恐竜の化石が発見されている。ゾウだっていたのだ。そのへんに流れているような川からダンプのタイヤほどのアンモナイトが出てきたりもする。それらの化石や現場写真を眺めているだけでもわくわくできる。

・「大ロボット博」はいまだにものすごい人気で入場までに1 ~2時間待ちは覚悟しなければならない。来客を寒空に行列させてるのはお役所仕事の悪いところ。整理券を発行してほしいと思う。ロボット目当てに来た人に、待っている時間にじっくり常設展を見る機会を与えれば、ずいぶんファンが増えるはずなのだ。

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1月13日「難民なんて言ってるもんだから」

・東京都がネットカフェ難民の支援に乗り出したとの報道。住宅の入居費用を貸し付けるらしい。店側にとってはとんでもない営業妨害だ。

・やはり「ネットカフェ難民」という言葉のイメージが一人歩きしてしまっているのである。現実的にはネットカフェに住む人ではなく、ネットカフェを支援した方がいいと思う。

・具体的にはまず3点、治安面と衛生面の基準を作ること。イスだけでなく簡易ベッドの設置を許可すること。そしてID管理の仕組みを構築し、テンポラリーな住所として活用できるように法体系を整えること。

1月14日「ゼロ年代のパンクスは」

・鳥居みゆきはすごいけど、あのタイプの才能はこれまでも結構いたのかもしれないとも思う。一人でゴスパンファッションで手首びしびし切ったりオツイチ読んだり小劇団に入ったはいいがとけ込めずただのメンヘラと思われてたりしてるうちに埋もれていったりしてたわけである。

・伝わりにくい才能というものもある。10回みなくてはわからない「叙述ギャグ」とかね。鳥居みゆきの場合それが一気に評価されたのは、ニコニコ動画のおかげだ。小島よしおまではユーチューブでOKだった。そのあたりの違いというか境界線は研究に値する。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。