第353回

3月5日「よりキングらしく」

・『ミスト』試写。原作はS・キングの「霧」(『スケルトン・クルー』/扶桑社ミステリーに収蔵)。とある田舎町が突然濃霧に包まれる。買い物の途中スーパーマーケットに閉じこめられてしまう住民達。外の白一色の世界からわけのわからないものが触手を伸ばし、人々をさらっていこうとする。シンプルな設定でぐいぐい引き込まれて一気に読まされてしまうが、最後にあれっ??? となる、そうキング作品によくあるパターン。キングは小説を書く際にプロットを作らない。先のことを一切考えずにただ1行1行書くんだそうだ。それで伏線が一気に回収され大団円に収まることもあるし、そうでないこともある。

・「霧」はキング作品の中でもB級ホラー映画になるタイプの作品。『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』を、つまりA級の方のキング作品を作ってきたフランク・ダラボン監督がこれを選んだのは、オリジナルのラストシーンを「発明」し、その使用についてキングのOKをもらったからだと推測する。

・それがもう最高で、最低で、実にキング的世界なのである。この1シーンのせいで僕はこの映画が大嫌いになった。けれど、一人でも多くの人に見てもらいたいとも思うのである。

3月6日「メイドカフェじゃないってば」

・カフェの内装の打ち合わせ。面白いデザインになりそうで、楽しみである。このあたりの具体的プロセスについてはそのうち専用ブログの方でリポートする。

・内装業者さんやカフェのスタッフを連れて近隣に挨拶。僕にとっては顔見知りのお店ばかりなので、うちでお店をやると言うとみんな驚く。

3月7日「ギターキッズにも、ゲームキッズにも」

・『ギターヒーロー3』(アクティビジョン/プレイステーション2、プレイステーション3)がものすごく楽しい。このシリーズをこれまでやらなかったのはバカだった(日本版は出てなかったけれど、Xbox360版なら輸入盤でも遊べたのだ)。

・ギター型のコントローラーを持って弾きまくる音ゲー。ロック史に残る名曲が70曲、オリジナル版で入っている。プレイ感覚は、ギターうまくなりかけの中学生が感じる気持ちよさに近い。懐かしい感覚がリアルに蘇ってくる。

・そういえば90年代初期には、適当にボタン押したらエレキギターが弾ける(気になる)「ジャミネーター」なんて電子玩具があった。全く逆のコンセプトだけど、操作感覚はなんとなく似ていたりする。

08031401.jpg

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。