第385回

10月12日「まちにまった」

・チュンソフトのサウンドノベル最新作『428 ~封鎖された渋谷で~』(Wii/セガ)サンプル版をじっくりプレイ。

・時間軸と空間軸を行きつ戻りつ、多面的なドラマを楽しむ『街』スタイルのゲームだ。Wiiリモコンなら、テレビをかちゃかちゃ切り替えながら見てるような気楽さで愉しむことができる。静止画から動画への切り替わり、場のテンションや人の口調に応じたセリフの出方の変化など、演出も細やかで、そつがない。一般人にも受け入れられやすいものに仕上がっている。

・かつ、ボーナスシナリオに奈須きのこ氏を起用するなど、マニアへのサービスもおこたりない。いけるかも。

10月14日「高橋名人」

・『ゲームラボ』誌の取材を受ける。「高橋名人」の特集記事を作っているそうだ。僕が構成を担当させてもらったファミコン映画『GAME KING 高橋名人VS毛利名人 激突!大決戦』についての裏話など。20年以上前の話なのだが、高橋名人が出てきた頃のゲーム業界は良い意味でデタラメで、ものすごく熱気があって、楽しかった。そういえば高橋名人の指に3億円の保険をかけようなんてアイデアもあったなあ。

・高橋さんがすごいのはその後もずっとタレントとしてキャラクターとして存在感を維持してるということだ。無形文化財に指定してほしい。

10月16日「ケータイ小説が立証したこと」

・『Wiiミュージック』発売。頭からっぽにして様々な楽器をかき鳴らす快楽は生理的なものだが、やってるうちにほんとに音感が向上していくような手応えも、ある。こういう動物的なツールが、知的な創作性を生むのである。

・文学の領域では、ケータイによって口語がアップデートされた。原稿用紙の使い方や印刷までのプロセスを知らなくても、それどころか漢字が書けなくても日本語の文法すらちゃんと勉強してなくても、小説を書けるようになってしまった。書いて読んでもらう愉しみを享受するだけでは、ない。そこから本当にベストセラー作家になってしまう人が、続出しているのだ。同じことが、今後他の領域でも起きると確信している。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。