第402回

2月15日「本気のワークシェアリングとは」

・コンピュータとネットワークによって社会の仕組みと個人の生き方を変容させることが大事である。好きなことを1日にほんの数時間やってそれでOK、なライフスタイルはもう可能だと思う。

・そのためには、時間と空間の呪縛から解き放たれる必要がある。大抵の会社の大抵の業務は、すでにどの時刻でも、どの場所にいてもこなせるようになっているはずだ。

・100%の在宅勤務はすぐには難しいかもしれないが、例えば夜型の人と昼型の人を時間をずらして配置すれば、オフィスは今の半分のスペースで済む。企業としてはそれくらいのことをやらないと、生き残れないのではないか。

・個人として今やっておかなければならないことも、たくさんある。最も大事なことは自分のやりたいこととできることを明確に知ることだが、それだけではない。例えば、自分の本当の生活サイクルを知ること。

・一度でいいから、時計のない密室で、一人きりで、10日間、暮らしてみてほしい。眠くなったら寝て、目がちゃんと覚めたら起きる。おなかが減ったら食事する。その時間を、外に電話するなどの方法で正確に記録する。7日過ぎたあたりから、正確なペースが出来ていることがわかるはずだ。1日が25時間の人もいるし、40時間の人もいる。つまり24時間ペースで毎朝起きるだけで相当なストレスを感じているケースもあるわけだ。

2月16日「ヴァン・ダムのあれはなかったことに?」

・『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』試写、ひたすら痛快なアクション映画。最近は大作ほどやたらに深いテーマを扱ったり映像的なギミックに凝ったりして疲れてしまうことも多いけど、こういう映画もたまに観てスカっとしてみたい。ストーリーはツッコミどころも多いけど「ゲームの映画だからなんでもあり」と言い訳のためだけでも、ゲームを原作に使った企画の意味はあるのだ。

・ただゲームのファンとしては「あの技をこう実写化したか」というところで唸らせてほしかった。それから主人公のチュンリー(クリスティン・クルック)はかわいいけど東洋系ではないし、ああ、なんということだ、一度たりともチャイナ服を着ないんである。

・クリスティン・クルックはゲーム版『ストリートファイター』を撮影が終了するまで一度もやったことがなかったらしい。例えばベストセラー小説の映画だったら、それを読まずにオーディションを受けるハリウッド女優はいないだろう。ていうか普通あわててやりこんで、嘘でもいいから「昔から好きだったわ」とか言うもんじゃないだろか。

・監督以下ハリウッド側のスタッフは、ゲームに対する思い入れはあまりなかったのだろう。超のつくゲームおたくポール・W・S・アンダーソン監督を起用し、原作ゲームの大ファンであるミラ・ジョヴォヴィッチをヒロインに据えた映画版『バイオハザード』シリーズとはそのあたり、立脚点が違う。

2月17日「温暖化も織り込みつつ」

・だんだん暖かくなってきた。苗市に行ってみた。日曜園芸家向けの市だが、野菜、柑橘、ベリー、芋、など、驚くほどのバリエーションが揃っており、とても賑わっていた。結構なブームになってるのかも。家庭菜園程度でも、都会の子供に、将来の選択肢として「農業」の可能性を考えてもらうきっかけになる。その意義は大きいと思う。

・今年は一番手のかかる段階まで済ませた苗木の状態から、土も買ってしまって、勉強しながらいろいろ試してみようと思う。農業の未来がどうかとか食糧の自給率がこうのという話は、ちょっとでも実感を得ることができてからだ。

・コーヒーの苗も結構売ってるんだね。日本で、部屋の中で鉢植えで実が採れたという例も聞いた。2粒だけだったらしいけど。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。