第417回

5月30日「オタク文化を世界180カ国に」

・NHK国際放送の番組『Imagine-Nation』に出演。『ひぐらしのなく頃へ』現象や日本のノベルゲーム文化についてコメントさせてもらった。

・日本のマンガ・アニメ・ゲームといったポップカルチャーを紹介する番組である。NHKが世界180カ国(!)で放送しているらしいが、残念ながら日本国内の放映はない。つまり「日本国」の対外パブリシティのためにやってることなんだね。ただしNHK国際放送ホームページでオンエアタイムにあわせてネット配信されているので、国内の人はそちらでどうぞ。僕の出演回は7月8日 (08:30/ 12:30 / 16:30 /20:30/ 24:30/ 28:30)放映予定です 。

・オタク文化を一般の人にきちんと伝えるのは実はとても難しい。日本国内でも、たいていのメディアはただそれをフリーキーな現象として、変態がやってるおかしなこと、として括ることで誤魔化している。ところがこの番組のスタンスは違っていた。例えばアメリカ人のリポーターさんが、スタジオ収録までにゲームをある程度プレイしてきていた。「ギャルゲー風に始まるストーリーが、ホラーに転調するまでにものすごく時間がかかって驚いた」みたいなことを言うのである。日本のテレビ番組のスタッフも、取り扱うものに対してこれくらいのリスペクトを持つべきである。

6月1日「富士額フェチに」

・竹中直人監督作品『山形スクリーム』試写。落ち武者VS女子高生。しずけさとおかしみがそこはかとなく漂ういつもの竹中映画と違う。竹中直人がテレビの深夜、つまり『東京イエローページ』とか『恋のバカンス』で見せていたあの芸風だけで全編突っ走る。

・凄いのは、出演者の全員が竹中芸をコピーしてること。出てくる人、出てくる人、みんな竹中直人の物まねをしているのだ。いつもの竹中ファミリーだけでなく、沢村一樹だろうがEXILEの人だろうが紗綾だろうがクリスタル・ケイだろうがみんな。

・それから成海璃子の、日々変貌していく美しさはとても貴重だ。見るたびにひやひやさせられる、そんなところが。

6月3日「大学はニコニコできるか」

・大学院。ニコニコ動画での実験を始めて以来こういう場の必然性を必死に考えながら授業をやっている。生で、デスクトップを見せながら、質問を受けながらの放送ができるのに、わざわざ教室に人を集めることの必然性と、責任を。

・いちばん良いのは、大学が新しいメディアをどんどん取り込む実験の場となることだと思う。実は新型インフルエンザで休校になった時の対策として、ネットを使って受講生と双方向のやり取りをするシステムも考えたのだが、学内ネットからニコ動に繋がらないことを知り、断念した。

・講義は年のうち半期くらいにして、残りは社会に出て働けるような仕組みを産学協同で作ることで、システムは強制的に新しくなるだろう。大学3年くらいで内定とって残りは遊び回るような仕組みは本当に無駄だし。

・試しに働いてみて、もっと勉強しなければいけないことが見えたら、戻って勉強を続ける。そして半年後、もう一度社会に出てみる。それを最大4年間は繰り返せる仕組み。生涯を捧げられる仕事をめっけたらそのタイミングで大学は卒業、勉強と研究を深めたいと思ったら大学院に進む、ないし研究職に就く。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。