第488回

4月28日「再生」

・ゲーム業界も大変なことがうち続いているけれど、斬新な作品が次々と出ているので、見逃さないでほしい。話題性としては『エルシャダイ』。ゲームの内容が開示される前に、短いPVだけで、ネット上に一大ブームを喚起したタイトルだ。

・実際にプレイしてみると、世界観も、ゲーム性も、ユーザーの期待や妄想を裏切らないものだった。制作者の情熱が、ゲーマーの深層心理を正しく刺激していたということだ。イメージを事前にユーザーに伝えることに成功した理由は、ゲームのコンセプトとデザインを一致させたアートディレクションの見事さにあると思う。

・これまでゲーム業界があまり重視してこなかった部分だ。このタイトルのヒットが、ゲームの制作や広報のスタイルに変化を促すだろう。今後、ゲームもデザインコンセプトによってジャンルタイトルがついたりするかもしれない。「渋谷系」みたいな。

・さて、すみませんが少し自分の話。10年ほどもがいていましたが、見えてきたものがあり、また小説をがんばっています。綿密な取材を踏まえて、思考だけでなく思考実験の成果を書くことが、自分の役割だと思っています。90年代に「ゲームキッズ」シリーズ、00年代に「プラトニックチェーン」シリーズで進めてきたシミュレーションを、完成させていきます。

・テーマは、「死」。他の誰でなく「あなた」の死です。読んでもらうことであなたの「生」を一変させます。死んでもやります。そのためにィキル。

・『iKILL』をシリーズとして完成させていきます。まず第1作の『iKILL』を最新形態に更新してリリースします。今回はアートワークにも注目していただきたいです。 (すごいイラストレーターがデビューしますよ)。ここから、新しい方法を駆使して読者との繋がりを強化していくプロジェクトを、新しい出版社・星海社と進めます。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。