渡辺浩弐の日々是コージ中
第489回
5月11日「最前線から」
・『iKILL』見本、届いた。僕の代表作。星海社を拠点に今後シリーズを進めるにあたり第1弾から改めてリリースして頂くことになったので、この機会に完全版として仕上げた次第。余談だけど挿絵をじっくり見ていたら凄いことに気づいた。みんな気づくかなー。
・さて、WEBサイト「最前線」運営元でもある星海社の戦略について、一度きちんと話を伺いたいと考えていた。そうだニコニコ生放送で、やればいいんだ。5月20日(金) 19:00〜いつものKカフェに、おなじみ太田克史COOと、そして編集者の山中武さんをお招きする。ここで、新プロジェクトの発表もあるかも。というか、あります。
5月12日「アナキズムとしてのIT」
・日本政府はソニーを助けなかった。アメリカでは事態の解明と収束のため国家機関が徹底サポートした。ソニーはこれから、アメリカの会社になっていくかもしれない。
・司法がホリエモンを潰したプロセスからも、日本国の権威が、ITによる変革をアナキズムと見ていることがわかる。既得利権にしがみついた老人達が新しい潮流を堰き止める、そして世界で進んでいる変革から国まるごとおいてけぼりになっていく。そんな国に、若者がアイデンティティーを感じなくなるまでは、とても早いだろう。
・領土問題も自然災害も原発事故も大変なことだけど、土地としての日本国がぼろぼろになり民族としての日本人がちりぢりばらばらになったとしても、アイデンティティーさえあればネットそして情報のインフラをもって国家は保たれる。そこに、21世紀の先進国の希望があるはずなのだ。
・「今」はとても大事な時だ。国をどうデス&リバースさせるか、決断するタイミングかもしれない。
5月15日「アナキズムとしてのチャリティ」
・企業の義捐金は損金として課税所得から差し引くことができる。つまり100%節税に使える。税金に納める代わりに払っている場合、実は全く自腹を痛めてはいないのだ。だからぺらぺら自慢すんなよ、という話ではなくて。
・もし税金として払っている金が適切に使われているとしたら、そういう寄付に意味はない。普通に税金納めてればそれでいいのである。ただし、税金にいったん納めてしまうとそれは例えば東電のボーナス額を守るために使われたりしてしまうわけだ。政府は信じられない、直接被災地に渡したい、だから寄付金として払う……そんな考え方なら、面白いと思うのだ。日本の、多くの大企業までもがアナキストになり得るこの状況が。
・しかしぼんやりしてるうちにそこにまで行政がしゃしゃり出てきてしまったという現実がある。そのせいで、せっかくのお金が敏速に配られなくなった。ここで政府が目に見える「害」になっている。石巻市の避難所に言って直接お金を配った人がいる。その行為に共感する人が多いということは、この国は近い将来根本的な変革の可能性があるということだ。
・ところでみんなで本を作って印税と売り上げの一部を寄付しよう、という企画に共鳴し、寄稿させて頂いた。 『わたしの3.11』 (毎日新聞社)。いろいろな立場の人々があの日あの時どこで何をしていたか、そして何を見て何を考えたかを書いている。僕は、伝えたい、売れてほしい、それからほっとしてもらいたい。と、3つのことを念頭に、書いたよ。