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俺の夜

たまには足を延ばして。八王子の“深海”で泳ぐ

 春はあっという間に過ぎ、すでに夏の気配がムンムン。ギラつく太陽にいささか開放的な気分になるが、噴き出す汗で大きな染みを作ったワイシャツに閉口する季節がやってきた。そんな俺は一服の涼を求め、中央線に乗ること2時間弱。奥多摩の川辺に赴いた。さらさらと流れる川面を見ながら、缶ビールを舐めつつ、来し方行く末に思いを馳せていると、静寂を破る一本の電話が。「今から八王子に来ませんか?」。弾んだ声の主は、お馴染み夜遊びガイドのO氏。都心の遊びに食傷気味の氏は、週末のたびに「遠征」をし、新規開拓に努めているのだという。

 再び中央線に乗ること1時間半、緑に囲まれた奥多摩と比べれば、はるかに大都会感が溢れ出す八王子に降り立った。

 爽やかに手を振るO氏と合流し、駅近くの盛り場をパトロール。

 週末の黄昏時の街は人の活気に満ち満ちていた。見た目はいかつくも、都心ほどしつこくなく気さくな客引き、はやくもほろ酔いの若者グループは派手なネオンのキャバクラに吸い込まれていく。

「このいい意味での“やんちゃ感”。大宮でも感じましたけど、都心では失われた光景ですよね……」

 規制、規制で少し窮屈になった都心の盛り場を引き合いに出し、しみじみと語るO氏。鋭い目線の先には「大人の遊びBAR」なる潜水艦を模した看板があった。近づいてみると「海底のひみつ基地2F」とも書いてある。海のない八王子に突如として現れた潜水艇。あろうことか階段を2階に上がる大いなる矛盾。嗅覚を信じて、階段を上がってみることにした。

可愛い水兵さんがお出迎え!

マジンガールZ Blue Sub MARINE2号艇

(前列左から反時計周り)Risa(23歳)、ともちん(24歳)、はるか中尉(23歳)、るい中佐(23歳)、あゆ中尉(22歳)、あんり(21歳)、まりん艦長(永遠の20歳)

「いらっしゃいませ~!」。ドアを恐る恐る開けるとこだまする黄色い声。店内は熱帯魚や海に関する装飾がされており、マリンルックに身を包んだ女のコたちが一斉に駆け寄ってきた。まだ時間が早いからか、先客は皆無。席に座るとあっという間に7人の水兵さんが我々を取り囲んだ。

「艦長のまりんで~す!」

 元気な声の主を見ると、艦長ルックに身を包んだ女性が。“永遠の20歳”と自己紹介され、一瞬ひるむも、「お約束~」とツッコむ周りの女のコたちのハイテンションな笑いに救われる。聞けばこちらのコンセプトは「海底秘密基地」。潜水艇を模した店内に、海兵部隊と、航空部隊、2つの衣装に身を包んだ女のコたちが接客してくれるガールズバーだという。潜水艇のなかにCA系とはこれいかに。ホタルイカのように輝くミニスカから伸びた脚が、野暮な考えを一瞬にして消し去ってくれる。

 女のコの敬礼にライトなミリヲタ魂を揺さぶられつつ、杯を重ねているとカラオケのお誘いが。あれよあれよと舞台に上げられ、地元のスター、北島三郎御大の「北の漁場」を朗々と歌い上げるとスモークが! すわ船内火災かと思うほどの煙モウモウ大サービス。

 ファンキーモンキーベイビーズ、ユーミンなど、八王子にリスペクトを捧げつつ女のコたちと大合唱。

 いつの間にかご同輩で満員御礼状態の店内。「お客さんたちと丸2日間飲んだことがある」とまりんちゃんが豪語するほど“超地元密着系”の同店。週末はまるでサークルのようなノリで、女のコと客が一体となって盛り上がるという。

「なぜか店内でビール掛けをした」と女のコたちが楽しそうに語る“武勇伝”はさもありなん。

 気さくな地元のご同輩に交ぜていただき、終電まで飲み明かした我々。翌朝、俺の記憶は海よりも深い奥底へ消えていた……。

お一人のご乗船もお待ちしてます

マジンガールZ Blue Sub MARINE2号艇

ミニスカの女のコが一堂に会すると実に壮観な光景。この可愛い衣装に惹かれて乗組員になったというコも多いという

【マジンガールZ Blue Sub MARINE2号艇】
住:東京都八王子市三崎町3-9 福屋ビル2階
電:042-649-7474
営:17時~翌1時
休:なし
料:60分2500円(ワンドリンク、チャーム付き+税20%)
●雨の日は初回に限りワンセット90分2500円!

マジンガールZ Blue Sub MARINE2号艇協力/O氏(夜遊びガイド) 撮影/赤松洋太

豪華絢爛!ド派手な花魁ショーで春を感じる夜

 新社会人が夢と希望を膨らませて街に出るこの時期、俺のところにもあらぬところを膨らませた若人が

「パイセ~ン、イイとこ連れていってくださいよ~」と馳せ参じてくる。

 そんなとき、いきなりディープなところには連れていかない。すわ、奢ったとしても俺の財布にも優しく、面子が立つ、いわばCPの良い店を選びたいからだ。

 今回訪れたのは六本木。インバウンドで、今東京で最も“イケイケ感”のある街である。外国人が集まる「ハードロックカフェ」や六本木のランドマーク「ロアビル」とは目と鼻の先に、突如として遊郭を模した建物が現れる。

現代風の花魁道中は激しさを増していき

六本木香和

ダンサーの花音祭ちゃん(左)と小町ちゃん。祭ちゃんは本人からニューハーフと言われるまで気づかなかった

 ショーパブが乱立する六本木において存在感を放つ「香和」。豪華な花魁ショーで今や大人気の店だ。

 紅い暖簾をくぐり、受け付けを済ますと2階に案内される。レトロな階段を上がると、突如として現れたのは桟敷風客席。まさに芝居小屋の風情だ。

 100人は十分に収容できる大箱。辺りを見回すと、客の半分は外国人。聞けば、ルーマニアからのご一行のようで、テンションが高い。舞台前のかぶりつきには接待と思われるスーツ姿の紳士淑女。国際都市・東京の遊び場とは何かを知るには十分の雰囲気だろう。

 暗転――舞台には豪華絢爛な花魁たちが現れ、妖艶な「花魁道中」が始まった。15mにも及ぶ高さのある舞台は、音楽や照明に合わせて上下する「高速可動式」。花魁たちの踊りが激しくなるにつれ、舞台も波打つように動くのには圧倒される。演目もストーリー性があり、歌舞伎でお馴染みの「八百屋お七」を現代風にアレンジした踊りが行われた。恋人に会いたい一心で放火する女の情念を描いた作品だが、なかなかに露出度の多い衣装もあり、花道に女のコが降りてきた時は思わず身を乗り出してしまったほど。1時間のショーはあっという間に終わってしまった。

 終演後には先ほどまで舞台に上がっていた演者たちが各席を回ってご挨拶。お気に入りのコがいれば、チップなど追加料金ナシでしばしトークができる。我々は花音祭ちゃんと小町ちゃんを“キープ”。妖艶なビキニ姿を披露してくれていた、祭ちゃんはニューハーフというから二度見してしまったほど。

六本木香和

演者の皆さんとステージ上で記念撮影ができるサービスも。紙焼きの写真を帰るときにプレゼントしてくれる

 デート中と思しき男女もおり、雰囲気は申し分なし。若人に「パイセン面」するにはうってつけではないだろうか。

【六本木香和(かぐわ)】
住:東京都港区六本木5-4-2
電:03-5414-8818
営:18時~ラスト(ショーは19時半、22時~の2部制)
休:なし
料:¥3500~●入場料込み飲み放題セットプラン(¥6500~※前日まで要予約)等各種コースあり

六本木香和

六本木香和

協力/O氏(夜遊びガイド)撮影/渡辺秀之

超オフィス街・日本橋に現れたバニーガールを愛でる夜

 日本橋は東海道五十三次の起点、江戸時代から日本のカルチャーの中心であった。明暦の大火(1657年)での焼失を機に現在の台東区に移転したが、江戸遊郭の「吉原」はもともとはここ、日本橋にあったのだ。そんな色街も、平成の世ではすっかりオフィス街に変貌、男の遊び場としては“機能不全”に陥っている。しかし、その旧吉原から目と鼻の先、明治座近くに「花街」があると連絡をくれたのはお馴染みO氏だ。

 雨上がりの土曜日の夜、氏が待つというその店を目指した。

◆静かなオフィス街に突如現れた桃源郷

看板「土曜日の夜は賑やか、ダウンタウンへ繰りだそう」。鼻歌をくちずさみつつ地下鉄の長い階段を駆け上がると辺りは暗がり。オフィス街特有の静けさだ。不安は的中、見事に道に迷う。雲間から現れた月に照らされひっそりと佇む立て看板。「BUNNY BAR」。看板が指すはオフィスビル。エントランスにそれらしき文字はない。エレベーターで上がると鋼鉄のドア。屋号も何も書いていないが、耳を押し当てれば、かすかに矯声が。

「いらっしゃいませ~!」

 わずかに開けたドアの先、ピンクのバニーちゃんと目が合った。瞬くネオンが目に染みる。すでに出来上がったO氏が隣で手招きしていたのはガールズバーであった。

オフィス街のバニーを探しに来て!

バニーを探しに来て!

バニーガールのユイちゃん(左)とリコちゃん。「夜になるとひっそりとするオフィス街で敢えて勝負」と意気込むが、実は近隣住民も多く訪れているという

「全然見つけられなかったって初めてのお客さんは言うんですよ」

 とハニカみながらおしぼりを渡してくれたのはピンクバニー姿のユイちゃん(21歳)。灰色のオフィス街から急転、見事な谷間が目にも眩しい。ユイちゃんの隣にはブラックバニー姿のリコちゃん(23歳)が。O氏の舐めるような視線を一身に浴び続けていたようだ。

「早い時間帯は超穴場。バニーの独り占めができるんですよ!」

 と目を光らせるO氏。夜遊び不毛の地を開拓する嗅覚に感服する。

「濃いめで」と注文した緑茶ハイをマドラーで一生懸命かき混ぜるユイちゃん。リズミカルに揺れる胸間に目を細めていると、目配せしてくるO氏。氏の視線の先を見やると……しっぽが2つ。なんということでしょう!なぜか腰の辺りに鏡が設えてあり、そこに映るのは勿論バニーちゃんの桃尻だ。

「ウチのお客さんは鏡の中のほうが好きみたいで、目も合わせないでガン見する人ばかりです(笑)」

週末のピーク時には12~13人がカウンターに立つとか。

週末のピーク時には12~13人がカウンターに立つとか。壮観な光景を求めるご同輩の、ベストポジション争奪戦は想像に難くない

 男心を知り尽くした“匠の技”。前屈みで鏡を凝視すると目が合う呆けた顔、顔、顔。いつしかご同輩でカウンターは埋まっていった。

お尻ばっかり見てないで、もっとお話ししましょ!

お尻ばっかり見てないで、もっとお話ししましょ! 江戸時代から脈々と続く、男のオアシスの記憶。日本橋の夢物語は終わらない……。

【Canan(カナン)】

【Canan(カナン)】

【Canan(カナン)】

中央区日本橋久松町13-5
日本橋エクセレントビル4階
TEL:03-6661-9290
営:17時~翌5時
休:日・祝
料:2800円(60分・飲み放題)~
 
神田にある同店の2号店。神田店が満員でこちらに流れてくるお客も多いとか

<撮影/渡辺秀之 協力/O氏(夜遊びガイド)>

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