全線6車線の新東名を4車線で使っているのはなぜなのか?

今から10年前、日本の有料道路の建設や管理は、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団という4つの特殊法人が牛耳り、談合が横行。社会問題と化しておりました。そんな道路4公団が構造改革で民営化され、10月で10周年を迎えました。この10年で何が変わったのか? 道路公団民営化の立役者・猪瀬直樹氏と一緒に、民営化の成果とこの先なすべきことを総括してみました

清水草一=文 Text by Shimizu Souichi

◆道路公団民営化とは何だったのか? 10年たった今、振り返ってみた!

道路公団民営化とは何だったのか? 10年たった今、振り返ってみた!【対談】猪瀬直樹×清水草一


清水:道路公団民営化から、10年たちましたが、その立役者として、この10年を振り返っていかがですか?

猪瀬:10周年ということで、新聞が何社か取材に来たが、記事を見たら実にひどい。今だに「無料開放遠のく」みたいなことを書いている。10年前もわかってなかったが、今でもわかってないな。

清水:これだけ高速道路は良くなったのに、まったく無意味な揚げ足取りですね。

猪瀬:僕は最初から、高速道路が無料になるとは考えていない。維持管理費はずっと取る必要があるんだから。僕がやったのは、借金を45年で返済する仕組みを作ったことだ。そのままで行けば借金が50兆円、60兆円と増え続けて、通行料金は値上げされる一方だったところを食い止めただけでなく、料金を値下げさせ民営化したことでサービスも向上し、順調に借金が減ってるわけだ。10年前に38兆円だった債務は、今では29兆円にまで減っている。

清水:怖いくらい順調です。

道路公団民営化とは何だったのか? 10年たった今、振り返ってみた!

誰かが勝手に命名した猪瀬ポールなんて僕は知らんよ!

猪瀬:老朽化対策で、借金の返済期限が45年から60年に伸びたのはまた別の問題だ。民営化によって料金収入をしっかり返済に回すスキームを作ったことで、きちんと成果は上がっているんだよ。サービスエリアの自由化でファミリー企業を排除したことで、SA・PAの売り上げも3000億円から4000億円にまで増えているし、風景が一変した。

清水:もはやテーマパーク化してますからね。

猪瀬:10年前に僕は「サービスエリアはアウトレットモールのようになる」と予言したが、実際そうなってるじゃないか。その成果を誰も言わない(笑)。

◆民営化から10年。次にやるべきことは?

清水:実際、道路公団民営化で高速道路は生まれ返りましたよ。私はドライバーとして猪瀬さんに心から感謝しています。で、10年たった今、そろそろ次のステップへ進む時期じゃないかと思うわけです。その1つが、現状4車線の新東名・新名神の6車線化です

猪瀬:ちょっと待て。なぜ僕が当時4車線でいいと言ったか、その意味を理解してるか? たとえば4車線にすれば、トンネルの建設コストを半分にできるからだ。

道路公団民営化とは何だったのか? 10年たった今、振り返ってみた!

民営化から10年たち、そろそろ猪瀬ポールを外してもいいのでは?

清水:でも実際には、民営化した10年前の段階でトンネルはほとんど掘ってしまっておりました。しかも、新東名は全線6車線でほぼ完成しているのに、わざわざ4車線に狭くして使ってます。トンネルの中には延々とプラスチックポールが立てられていて、わざわざ1車線分減らしているんですが、あれが一部で“猪瀬ポール”なんて呼ばれているわけでして(笑)。そろそろあのポールを取ってもいいんじゃないでしょうか!

猪瀬:僕は、あのポールがそんな名称で呼ばれていることは知らない(笑)。そもそも僕が立てさせたわけじゃないんだから。

清水:もちろんそうなんですが、実際のところ新東名は、開通してみて初めて、「こんなにしっかり全線6車線設計のまま造っていたのか!」と驚いたんですよ。でも、ドライバーとしてはすごくうれしかったわけです。これなら今からでも簡単に6車線にできるなと。民営化で道路建設のコストダウンが進み、建設費もちゃんと返済できているわけなので、せっかく6車線で造っちゃったんだからそろそろ使ってもいいんじゃないか?ということなんです!

猪瀬:だから僕には、そんな権限はない(笑)。

清水:それはそうなんですが(笑)。でも民営化の立役者として、猪瀬さんにぜひともGOを出していただけたら、私としてはうれしいんですが。警察庁も、新東名の制限速度を120km/hに上げることを本気で検討し始めてます。その前提条件が6車線化なんですよ。

道路公団民営化とは何だったのか? 10年たった今、振り返ってみた!猪瀬:そのためには、まず道路公団改革の意味をきちんと理解する必要がある。それはつまり必要なところに金をかけるということだ。現状、4車線で交通容量は足りてるんだろう? それでも必要なら、必要な場所だけ付加車線を付けるとか、この先、東名が老朽化対策で通行止めが必要になる際に新東名の6車線化が必要だ、といったロジックがあるなら、そうしてもいいだろう。

清水:なるほど! 現状交通容量は足りてますが、いずれ東名・名神ともに本格的な老朽化対策が必要になりますからね! 特に新東名はすでにほとんど6車線分できてますから、大してお金はかかりません。全線片側3車線になれば、現状のようにトンネル清掃の車線規制で渋滞が起きることもなくなります。

猪瀬:とにかく、費用対効果との兼ね合いは絶対に必要だ。

◆道路公団改革で国交省にも変化が!

清水:費用対効果は大丈夫です! 超安上がりですから。もう1つは、国交省から出ている首都圏の新料金案です。圏央道の内側をすべて統一料金にするという内容で、驚くほど理想的で文句なしなんですが、圏央道は値下がりする反面、首都高の上限料金は1300円に上がるという内容です。猪瀬さんは副知事時代、距離別料金の上限を900円に抑えさせましたが、これについてはいかがですか?

猪瀬:当時はまだ圏央道がそんなにできていなかったから、首都高は下限500円から上限900円にするのがいいんじゃないかと言ったんだ。圏央道ができれば、そっちへの迂回を促進するために新料金体系へ移行する必要はあるだろう。

清水:じゃ、これはGOということでOKですね。

猪瀬:中央環状線の開通効果も出ている。圏央道の効果も当然出るようにする必要がある。

清水:私としては、これほどまでに理想的な料金案が国交省から出てきたことに驚いてます。

猪瀬:道路公団改革を経て、国交省の考え方も変わったということだろう。つまりロジカルじゃなきゃいけないってことだ。以前は、高速道路のステークホルダーは国交省道路局や公団だったが、今はユーザーに変わった。道路公団民営化は、思想的な改革だったということなんだ。

<そもそも猪瀬ポールとは?>

 新東名を走ると、片側3車線分の幅があるのに、わざわざプラスチックポール等で狭くして、片側2車線で開通させている。このポールが、ネットでは通称“猪瀬ポール”と呼ばれている(猪瀬さんが命名したわけではありません)。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=963551

 背景には、もともと6車線で設計・建設が進んでいたものが、民営化による建設費削減のため4車線と決められたから。そうしないと当時の世論は納得しなかったわけで。しかし、実際にでき上った新東名162km中、4割弱の区間に「付加車線」があり、実質片側3車線になっている。NEXCO中日本は、「混雑防止のため、警察と協議のうえ、インターチェンジやSA/PAの合流部分の前後に付加車線を設置しました」と言っているが、建前上はあくまで片側2車線。これを10周年を機に、建前上2車線をやめ、さらに実際は3車線あるのに猪瀬ポールなどで1車線通行不可にしている車線を使えるようにし、完全な片側3車線化を実現してはどうでしょうか? せっかく片側3車線あるのに使わないのは、それこそ無駄というものです。

撮影/我妻慶一(本誌)

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