“金網マッチ”ホーガン対バンディ――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第59回
このイベントの1カ月まえ、NBC特番“サタデーナイト・メインイベント”(1986年3月1日オンエア分)でおこなわれたホーガン対ドン・ムラコのシングルマッチにバンディが乱入し、500ポンド(約226キロ)の全体重をかけたフライング・ボディープレスでホーガンをKO。ホーガンはろっ骨を“骨折”し、戦線離脱した。
この日、リングに上がったホーガンのわき腹には白いテーピングが巻かれていた。実況・解説チームのジェシー・ベンチュラとロード・アルフレッド・ヘイズは、ホーガンの負傷をこの試合の重要なポイントとして視聴者に伝えた。
ゲスト・リングアナウンサーはロサンゼルス・ドジャース監督(当時)のトミー・ラソーダ。特別レフェリーは映画俳優のロバート・コンラッド。80年代の“レッスルマニア”は、こういったゲスト・セレブレティーをハリウッド味のスパイスとして起用していた。
試合開始と同時にバンディがホーガンのわき腹からテーピングをはがした。ホーガンがバンディの首ねっこをつかみ金網に激突させるとバンディは額から流血した。
ホーガンはバンディをボディースラムで持ち上げようとするが、わき腹に痛みが走り、これは失敗。しかし、2度めのトライでバンディの超巨体を宙に舞わせ、返す刀で十八番レッグドロップを決めた。ホーガンはたったこれだけの動きでライブの観客を手のひらに乗せてしまった。
ニューヨーク・スタイルの金網マッチは通常のフォール、ギブアップ、KOによる裁定ではなく、どちらか先にケージから脱出したほうが勝ちというエスケープ方式。わき腹を押さえながら悲痛の表情でコーナーに上がったホーガンは下から追ってくるバンディをなんとか蹴り落とし、金網を乗り越えて場外エスケープに成功。ゲスト・リングアナのT・ラソーダ監督がホーガンの勝利をコールした瞬間、プロレスの祭典“レッスルマニア2”はフィナーレを迎えた。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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斎藤文彦


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