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戦闘か、武力衝突か?「稲田防衛相、現地をちゃんと見てください」と南スーダン支援NGOスタッフが訴える

「戦闘」か「武力衝突」かなど、現地から見れば“言葉遊び”

⇒【写真】はコチラ(混み合う診療所で医薬品の支援を行っているJVC今井さん)https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1287030

ジュバのナイル川対岸地区は、多くの住民の避難先となっている。同地区の混み合う診療所で順番を待つ人々と今井さん。ここで医薬品の支援を行っている(2016年11月、ジュバ市内グンボ地区)

 これほどの大規模な「戦闘」について、稲田防衛大臣は国会答弁で何度もこう繰り返した。 「法的な意味の戦闘行為ではない」 「国際的な武力紛争の一環として行われたものではない」 「武力衝突や一般市民の殺傷行為がたびたび生じていることは事実」  自衛隊はPKO5原則のもと、紛争当事者の間で停戦合意が行われているということが派遣の条件となっている。もし「戦闘」が行われているということになれば、撤収しなければならない。そのため、どんなに街が壊され、人が殺されていても「戦闘」とは表現できないのだろう。 「『武力衝突か戦闘か』なんて、現地にいる者から見たら“言葉遊び”ですよ。7月の大規模戦闘の時は、外国人が多く泊まっているホテルが襲撃され、南スーダン人のNGO関係者が殺害されました。外国人は長時間拘束されたうえ、何人かの女性はレイプされました。その時、宿泊客はPKO部隊に助けを求めましたが、あまりに戦闘が激しかったためPKOは出動を拒否したんです。『他国の部隊も出動できないようなこの危険な状態で、自衛隊は本当に活動できるんですか?』と聞きたい」(今井さん)

自衛隊がいつ戦闘に巻き込まれてもおかしくない

 安倍晋三首相は国会で、南スーダンについて「永田町と比べればはるかに危険な場所だが、安定している」と説明していた。また稲田防衛相も昨年10月、ジュバにわずか7時間滞在して「現地は落ち着いていた」と確認したという。実際の状況はどうなのだろうか。 「今も各地で毎日のように戦闘行為が行われている状態です。ジュバでも民族間の敵対感情が強まっていて、いつ暴動や虐殺、大規模な戦闘が起きてもおかしくない緊張感があります。  PKO司令部は、昨年7月の戦闘時に破壊された反政府軍の拠点の近くにあります。しかも司令部に隣接する避難民保護施設には『反政府派の一部が紛れ込んでいる』として政府軍が警戒しています。そのため、この周辺はジュバ郊外でも最も治安が不安定。銃撃や兵士による住民・避難民への暴行などが今も起きていると現地の人から聞いています。  自衛隊はそのような場所で活動をしているんです。いつ戦闘が発生し、それに巻き込まれてもおかしくないでしょう」(同)  現在自衛隊は、インフラ環境が劣悪な南スーダンのために、道路や施設の整備などを行っているという。彼らが安心して活動できるよう、現地情勢を正確に把握することが必要ではないだろうか。 取材・文/北村土龍 写真/日本国際ボランティアセンター(JVC) ※今井さんは3月に再びジュバへの渡航を予定している。JVCの南スーダン緊急支援の詳細については http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/sudan/2016emergency.html を参照。
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