「どうなったか見たい?」彼女は私のボーナスで女性器を手術した――爪切男のタクシー×ハンター【第三十話】
最初は、彼女もそこまでイボのことを気にしてなかったが、断薬生活というのは精神を不安定にしてしまうものだ。ある日、お風呂で身体を洗っている時に、何気なくそのイボを触った瞬間、身の毛もよだつほどの嫌悪感に襲われてしまい、それ以来寝ても覚めてもイボのことしか考えられなくなったそうだ。このイボがある限り自分は幸せになれないのではないかという不安に悩む日々。そのうちイボは人面瘡のように彼女に語りかけるようになったという。精神の限界を感じた彼女は除去手術に踏み切ったというわけだ。
「……ねぇ」
「……なに?」
「ずっとニヤニヤしてるよ」
「……ごめんなさい」
インターネットの口コミで調べた腕の良い病院に出向き、診断を受けた。イボの除去に関しては、そこまで大きくないのでレーザー施術で一万円もせずに済むが、女性器の大陰唇と小陰唇のバランスが悪いので、余分な皮を少し切除しましょうと言われ「もうこれ以上このことで悩みたくない!」という一心で思い切って除去手術を受けることにした。手術自体は麻酔で寝ている間にすぐに終わったらしい。看護婦さんにツルッツルッに剃毛されたこと、麻酔注射を女性器に直接されたことはうっすらと覚えているらしい。切除したイボや皮を術後に見せてくれたそうだが、本当にグロかったという。
一通り話を聞き終えた私は口を開いた。
「手術終わった後は痛みとか大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「もう、悩みもなくなった?」
「……とりあえずはって感じかな」
「よかった」
「……うん」
「嘘なんて言わずに、お金のこと正直に言ってくれたらよかったのに」
「……恥ずかしくて言えないし、言ったら絶対に止めてたでしょ」
「そうだね、止める」
「……それって私が大事だから? お金が大事だから?」
「おまえが大事に決まってるからだろ」
「……本当かな」
「……」
「どうなったか見たい?」
「……見せて」
「……はい」
「……」
「……」
「……なるほど」
「……」
半年ぶりぐらいにじっくりと彼女の陰部を見た。確かに綺麗な作品に仕上がっていたが、ただ綺麗なだけだった。私は静かに彼女の股を閉じた。その後は、お互いに何も話さなかった。
『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー! |
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