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ネット上に溢れるアダルト映像の卑劣な手口――顔は映さない約束は無視、女性看護師を無修正で販売…

 ネット上に溢れるアダルト映像の過激化が止まらない――。  素人がネット上でのアダルトコンテンツ制作や配信に参入し始めていることは、前回前々回の記事で解説した。素人ならではの浅はかな感覚や低い遵法意識が様々な弊害を生んでいるが、カネになる以上、参入者は後を絶たない。「プロでさえ、次の加害者になる」と警告するのは、現役のAV男優・秋田氏(仮名)である。 「AV男優なんてとにかく儲からない。そこそこの男優で1日3本を撮影して、良いときで9万円程度。当然だけど、毎日仕事があるわけじゃないし、超人気男優以外は食っていけない。だから、撮影や編集までやりゃいいんじゃねぇの?って男優が出てくる」  秋田氏は大学卒業後にいくつかの職を点々としながら、アダルト系の雑誌出版社に入社。そこで編集者を務めた後に退社し、プロダクションを立ち上げた。企画の立案から撮影、原稿執筆や映像の編集まで全てをこなすなかで、自身もAV男優として活動するようになった。今では自身もネット向けのアダルト作品制作に携わるが“にわかプロによる悪質な行為”が目立ち始めているというのだ。 カメラマン

にわかプロによる悪質な手口

「とある売れない男優・Mは、プロカメラマンの真似をして、女のコがキレイに映るようにリングライト(撮影用の照明)と安いデジカメで撮影をしてるみたい。スチールだけでなく、ネットで動画も販売し、そこそこの収入らしいけど、その手口がひどい。女をモノとして扱っている」  ナンパ作品などに多く出演している男優Mは、表の仕事で食えなくなると、いち早く「裏」の仕事に鞍替えした。ナンパした女性を言葉巧みに説き伏せ、女性の嫌がる「顔出し」「モザイク無し」映像に出演させるというのだ。Mに声をかけられ、勝手に無修正の自慰行為映像を撮影・販売されたという女性看護師が訴える。 「下着のイメージモデルを探していると、渋谷で声をかけられました。最初は本当に下着姿だけをカメラで撮影され、3000円ほどもらったでしょうか。二度目は、飲みに誘われた後に強引に撮影され、そのときは下着もズラされました。三度目に自慰行為を強要されたのですが『顔は映さない』と言っておきながら、顔が写っている映像がネットで販売されていたのです」  顔は映さないと説明したMのハンディカムには、たしかに女性看護師の顔は写っていなかったが、実はMの背後にはもう一台の隠しカメラが設置されており、その映像が勝手に、しかも無修正でネットで販売されていた。Mは「フェチ向けの会員制マニアサイトで販売する映像」と言っていたが、アダルトチャットのネット広告にも、自身のあられもない姿が勝手に使用されている。  Mの知人によれば、Mはこううそぶいているという。 「モザイクの有無や顔出しかどうかなんて、とりあえず誓約書かせますけど基本無視。とにかく数打たないと稼げないわけで、どんなブスでも脱がせてハメりゃ一本になる。そういう女と何かを約束するなんて馬鹿馬鹿しい。個人情報流出がどうのって説明して、こっちの携帯番号を教えることもないし、都合悪けりゃ(連絡用の)ラインのアカウントを消せばいい。要するに、一期一会を大切にしてるんですよ(笑)」 動画 Mの暴言に開いた口がふさがらないが、事実、Mのような考え方をもってネット上で猥褻映像制作・販売に携わる“プロ”は他にも複数いるのだという。前述の秋田氏が憤る。 「アダルト業界って、昔は職人気質な人間が集まる場所でした。Mなんかはその風上にも置けないやつ。俺なんか、カネになるからアダルトをやってきたんじゃなく、好きだからやってきた。時代が違うのかな。Mみたいなのが増え続けて、このままではアダルト業界は落ちるところまで落ちるしかない」 <取材・文/伊原忠夫>
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