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「AV業界がV字回復する要因なんてひとつもない」絶望系ライター中村淳彦の憂鬱

 アダルトビデオに無理やり出演させられる女性たちの被害を、2016年3月に国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが報告書で発表して以来、一気に社会問題化したAV出演強要問題。

AV その3か月後には大手AVプロダクション・マークスジャパンが摘発され報道は加熱。結局、この事件は不起訴処分となったものの、問題は鎮静化することなく被害者たちの告発は今も続いている状況だ。

 そんな混迷を極めるAV業界だが、業界の未来を予言するかのような”不気味”な新刊が上梓された。『AV女優消滅 セックス労働から逃げ出す女たち』(幻冬舎新書)がそれだ。

中村淳彦氏

 著者は、近年貧困女性やAV女優の残酷な労働現場の実態を執筆しているライターの中村淳彦氏

「AV女優消滅」の真意


 人気AV女優がTwitterやブログのアカウントを持ち、自身の考えを表明するのが普通になった現在。また、トップ女優の中には地上波TVに出演するケースも少なくなく、日本のみならず世界中にファンを持つAV女優も出てきている状況を見ると、AV業界は一部市民権を得たように思われる。

 だが、そうした状況とは真逆に、中村氏は「近いうちにAV女優が消滅してもおかしくない状況」だと言う。

 その意図はどのようなものなのか。

「AV業界がV字回復する要因なんてひとつもない」


――「AV女優消滅」とはずいぶん衝撃的なタイトルですね。賛否両論飛び交いそうな。

中村淳彦(中村)氏:出版社がつけたタイトルですが、この本の取材の中で、そういう単語が何度かでました。“消滅”と言われても、僕は特に違和感はなかったので衝撃とは思わないですね。強要問題を除いても、AV業界は本当に暗い。V字回復する理由は一つも見つからないし、視界の範疇ではまったく活気がない。AVに先駆けて2000年代後半にエロ本が実質“消滅”しましたが、当時のエロ本関係者の諦めきった雰囲気と重なります。

――そうですかね? 本書の後半では第三者委員会の取り組み(※1)など、AV業界を取り巻く問題に対して建設的な話もありました。ルールに則ってつくられた”適正AV”は、その一例ではないでしょうか。

中村氏:適正AVの取り組みが成功すればいいですが、個人的にはうまくいくとは思えません。まず、元々グレービジネスをしている意識が強いプロダクションの足並みは揃わないだろうし、売れなくて細っているメーカーも、長期的展望のために商品価値を下げる余力があるとは思えない。徹底して目先の市場原理を貫いてきた業界なので、危機的状況である共通認識はあっても方向性は割れるはず。

――適正AVではない“ヌケるAV”は地下に潜っていってしまうと。

中村氏:夕刊紙ですが最近、「警察は本番禁止を目指している」という報道がされていましたね。適正AVは現段階では女優との契約書の見直し、自己決定とインフォームドコンセントを徹底する、という内容ですが、仮に適正AVに本番禁止まで求められれば、分断されて地下に潜る業者も出てくるでしょうね。すでに2000年代前半、消しの濃いビデオ倫理協会加盟の“オモテAV“が消しの薄い非加盟のインディーズAVに喰われるという歴史があります。同じことが繰り返されるんじゃないですか。

――今、プロ意識を持ち、堂々と”職業”としてAV女優の仕事に取り組む女性が増えています。しかし、男性消費者の一部からはそうしたプロ意識は求められていないように思います。「AV女優にあんなにテレビとか堂々と出てほしくない」「トップAV女優の意識高い系のツイート読むと萎える」「普通のコが気づいたらAV出ちゃって股開いてるのがいい」とか。

中村氏:強要問題が過熱する現在、男性消費者の新鮮な女子がいいとか素人がいいみたいな要望はどうでもいいことです。頭を切り替えて、シャットダウンするべきですね。初々しい素人女性を求める消費者の欲望そのものが、AV出演強要問題の要因ですから。現在は男性消費者の要望を後まわしにして、女優の人権を優先できるかという踏み絵を業界は突きつけられている。けど、今メーカーにその余力はないし、男性消費者の趣味趣向は変わらないだろうし、無理だろうなという印象です。

 たしかに、第三者委員会の取り組みは、頭をひねって出たいいアイディアと思いました。けど、今後プロダクションの力を弱めて、女優をAV業界の一員として一緒に業界を動かしていくというのは困難な道でしょうね。落ち着くまでは女優に振りまわされてトラブルまみれになるだろうし、産業として成り立たなくなる可能性もあります。

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AV女優消滅 セックス労働から逃げ出す女たち

絶望系ライターの憂鬱がこれでもかと凝縮




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