更新日:2017年09月26日 17:42
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高校生が日本初の「騒音トラブル解決モデル」を発足。周辺住民からの苦情も激減

日本初の「騒音問題解決モデル」が発足

吹奏楽

意見交換会が始まってから、吹奏楽部による住民の歓迎演奏が行われ、さらに信頼関係を高めた

 地域住民を動かしたのは生徒たちの「覚悟」だった。放送部員でもあった柳原さんは、一連の記録をドキュメンタリー映像「鼎談深志」にまとめ、今年のNHK全国高校放送コンテストのテレビドキュメンタリー部門で優勝を勝ち取るのだが、その映像の中で地域住民がこう発言している。 「生徒さんがあれだけ努力しているのに、住民が黙っているわけにはいかなかった」  そして5月27日、学校周辺の町会役員9人、生徒10人、学校の管理職などが集い、「鼎談深志」と名づけられた三者協議会が発足した。  さっそく、体育館や吹奏楽部部室の窓の開放を夏の3か月間、試験的に行うということが決まった。病気がちな住民への音の配慮など、その都度話し合うべき課題はあるが、生徒たちは『深志高校新聞』を近隣に配布したり、球技大会の前にはその旨を周知したりと、顔が見える関係づくりに腐心している。その結果、松本深志高校に寄せられる苦情の数は確実に減っているという。
バレーボール

「ボールの音がうるさい!」との苦情が寄せられた体育館は、今では窓を開けての部活動が再開した

 騒音問題解決のヒントがここにある。地域で人と人とが交流すること、トラブルに備える組織を設置しておくことだ。この組織「鼎談深志」は、柳原さんが卒業する来春後も残る。そして、年1回の定例会や臨時会で、双方が納得できる問題解決を目指すのだ。  松本深志高校の活動は、おそらく日本で初めてといってもいい騒音問題の解決モデルだ。これがどう伝播するのかを注視したい。 取材・文・撮影/樫田秀樹 写真/松本深志高校
フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線、入管問題などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。Twitter:@kashidahideki
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