世界的には枝豆ではなく毛豆!
そもそも、なぜこのようなイベントが開催されるようになったのか。主催者の青森毛豆研究会、会長の大浦雅勝さんがこう言う。
「小さい頃から豆が好きでした。東京で働いていたとき、毛が生えている豆(=毛豆)がないことに驚いたんです。地元・青森に帰ってから食べてみると、やっぱりおいしい。それで、作っている人たちに話を聞いてみたら、だれもが『うちの毛豆がいちばんおいしい』と言う。それならば、白黒はっきりしようじゃないかと居酒屋でなんとなく食べ比べをやってみたのがキッカケです。きちんと大会として始めたのが2013年から。ちなみに、よく『毛豆は枝豆ですか?』という質問をされます。じつは、
世界的には毛豆が一般的で、枝豆なのは日本人だけ。中国大陸でも“毛豆”と書いてマオドゥと呼ぶ。むしろガラパゴスは日本のほうなんです」
毛豆研究会会長の大浦雅勝さん
さて、こうした“豆知識”もありつつ、予選が終了。決勝戦は、投票で勝ち残った4種と前回大会の入賞者による3種を加えた合計7種類の毛豆で行われた。
果たして、結果はどうなったのか。運命の発表を迎えた。
会場には、地元タレント・黒石八郎さんも駆けつけた(写真右)
参加者たちが固唾をのんで見守るなか、今回の栄冠を手にしたのは、
ふくし農園の福士茂さんだった。
グランプリを受賞した毛豆
福士さんは、最強毛豆決定戦には初の参加となる。
「かねてから挑戦してみたかった。栽培するときにこだわっていたのは、一株一株に日差しを充分に与えること。自信はありましたが、まさかグランプリを穫れるとは思いませんでした。ちなみに、予選も決勝も自分が投票したのは他人の毛豆だったようです(笑)。今回はまぐれかも知れませんので、また来年も穫れたら自分でも本物かなと思いますけど」
グランプリ 福士茂さん(ふくし農園)
金賞 白戸サギさん ※大会当日は欠席
銀賞 一戸茂人さん(JIJI農園)
銅賞 高杉小学校 2年生(学校菜園)
銀賞の一戸茂人さん
銅賞の高杉小学校2年生を代表して町田明梨さん(左)
前回グランプリの毛豆王子こと長内さんは「いちから研究して来年またリベンジしたい」と悔しさを滲ませた。改めて主催者の大浦さんに毛豆の魅力を聞いてみると「
濃厚な味」だという。
「枝豆の場合は香りだけでおいしいと感じている部分もあります。一方で、毛豆の場合はしっかりとした素材の“味”が楽しめる。日本酒や濃い味のビールによく合う。薄いビールだと、毛豆の味に負けてしまうと思います」
大浦さんによると、毛豆はかつて中国大陸から伝わってきた。しかし、田んぼの縁などで栽培されていたりするだけで、売る用に作っている人は少ない。家に代々受け継がれた種で、おばあちゃんが作っていることが多いらしい。
また、こんな逸話がある。津軽のある地域の母親は、娘を嫁がせる際に家族が飢えで苦しまないように、毛豆の種を必ず持たせた。娘は嫁ぎ先でその豆を大事に育て、種を採り、母から娘へと脈々と受け継いでいく。毛豆はいわば、各家々で守られてきた“
秘伝の豆”なのだ。
「私たちにとって毛豆はあまりに身近な存在すぎて、あえて注目して周囲にオススメすることはありませんでした。それが今まで全国的には知られていない理由かもしれません。いつかブームになることを願っています」
大浦さんは今後、そんな毛豆を広めていきたいと語った。
大浦さんのオススメの食べ方は“蒸し焼き”。栗っぽい味が増し、見た目が悪いものほどおいしい。香りだけの枝豆ではできない調理法
さて、毛豆の旬は長くても約2週間ほどだが、これから10月上旬にかけてベストシーズンを迎える。とはいえ、全国への流通面ではまだまだ。青森では、一般的な居酒屋でも気軽に食べられるそうだ。興味があればぜひ青森まで足を運んでみてはいかがだろうか。
<取材・撮影・文/藤井敦年>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):
@FujiiAtsutoshi